プロを目ざす若い世代にこの仕事の魅力を伝えたいアトリエSUDOTEL:042(464)2474(撮影・福田栄夫/取材・増田忠英)建てた小さなプレハブで、婦人服の仕立ての仕事を始める。注文はひっきりなしにあったものの、しばらくして自分の技能に行きづまりを感じ、「ほかの洋裁店でもっと勉強したい」と就職したのがオートクチュールのアトリエだった。「普通ならミシンで縫うような部分も、あえて昔ながらの手仕事でていねいに仕立てていました。その一方で給与は歩合制でしたので、早くきれいに、何枚もこなさないと仕事としては成り立ちません。厳しい世界でしたが、いろいろな縫製をやらせてもらえて、飽きることはありませんでした」その後、アトリエを退職。介護や子育てなどによるブランクを経て、2002年に自身のアトリエを開き、技能検定一級を取得。技能コンクールに毎回参加してきた。「技能コンクールは、自分の作品をつくれる楽しさがあります。また裏方として手伝うことを通じてさまざまな出会いがあり、洋裁の視野を広げる機会にもなりました」現在は公益社団法人全日本洋裁技能協会の常務理事を務め、検定委員や技能グランプリ大会の主査、講習会の講師なども担当する。「つくる過程の楽しさ、仕上がったときの達成感、そしてお客さまに喜ばれることが、この仕事の醍醐味です。プロを目ざす若い方々に、この仕事の魅力を伝えていきたいと思っています」「現代の名工」表彰を機に半生をふり返って、こう感じたそうだ。「子どものころに夢みた仕事に就き、ずっと続けてこられたことは、本当に幸せなことだと思います。そして、70代になっても仕事ができていることに感謝しています」 vol.342東京都西東京市保谷町にあるアトリエSUDO襟の返りやウエスト部分などに、須藤さんの仕立ての特徴である「柔らかさ」が表れている「くせ取り」。湿り気を加え、アイロンの熱で平らな布地を立体的に変化させる。写真はウエストのくびれ部分に伸ばしをかけるところ「現代の名工」を受賞し「もっとがんばろう」という気持ちに味のある仕立て技の一つ、「ハ刺し」。生地の裏に毛芯を「ハ」の字になるように刺し縫いすることで、柔らかい襟の返しをつくる必要な道具にすぐ手が届くように配置されているアトリエ。ミシンはずっと足踏み式だったが、30年ほど前にモーター式に変えた63エルダー
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