エルダー2025年1月号
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2025.114潜在的なリスクが隠れている可能性があります。健康診断の事後措置で就業上の配慮を確実に行い、勤務日数・時間やシフト表の反映などを柔軟に行っていくことが大切です。(3)短時間シフト勤務制度の導入を検討する高齢者には、短時間のシフト勤務制度が適しています。特に、業務量に繁閑の差があるような業種では、シフト勤務制度を導入して高齢者を雇用することで、人員の調整がしやすくなります。実際に、短時間勤務制度を導入し、休憩時間も見直したところ、高齢者や子育て世代を取り込むことに成功した事例(青果卸売業A社、従業員数15人)もあります。【A社の短時間シフト勤務制度】◯ 高齢者は仕事以外の時間を大切にする人が多い傾向にあるため、最低2時間(週20時間以上)の勤務を可能とし、始業時刻も希望に応じ、朝5時から15時までの選択制とした。◯ 集中力を維持してもらうため、休憩時間を2時間ごとに15分単位で取得できるようにした。A社では、冬や夏の時期に応じて業務量の差が大きいため、季節ごとの人員調整を行う必要③柔軟な勤務時間を認める制度(エ) 労働者が個々に勤務しない日または時間を請求することを認める制度会社の事情を考慮しつつも、先述のような高齢者の特性をふまえると、「③柔軟な勤務時間を認める制度」をベースにするのが望ましいと考えられます。(2)多様性に応じた短時間勤務制度のメニューを用意する働き方のニーズが多様化するのが高齢者の特徴です。短日・短時間勤務制度などフルタイム勤務以外の選択肢を提供する場合、単にパートタイムの働き方を用意するのではなく、午前や午後だけの勤務、週前半・後半の勤務など、勤務形態メニューを複数用意し、充実させるほうが効果的に運用できます。また、高齢者のなかには早朝や夜間の勤務を希望する人もいるため、たくさんの勤務シフトを用意して選択してもらう制度とするのも有効です。このような多様な勤務形態は、子育て中の社員が高齢者に仕事を引き継いで退社時刻を早められるなど働き方改革にもなります。さらに、高齢者の健康管理体制も構築していく必要があります。高齢者が元気に見えても、がありました。その対策として短時間勤務制度等の導入により、高齢者も働きやすい環境整備に取り組んだ結果、高齢者や子育て世代からの応募が増加し、人手不足解消につながり、作業の区切りを「2時間単位」としたことが、体力や集中力のバランスもよく、従業員全体の成果量、作業精度も向上したとのことです。シフト管理者は、ほかのスタッフと勤務時間や勤務日数を均等にするのではなく、高齢者の勤務時間・日数の希望が少なくてもできるかぎり受け入れ、⻑時間労働を避けるようにしましょう。⻑時間労働を避けることで、体力的な負荷も少なくなり、集中力を維持しやすいため高齢者でも継続的に働くことができます。人手不足の状況が続くなかで、「いつまでも働きたい」、「社会に貢献したい」と考える高齢者の存在は、ビジネスにおいて大きなサポートとなるでしょう。ただし、高齢者をシフト勤務などで活用するためには、「時短勤務がメインで、なるべく要望を満たす」ことで、働きやすい職場に向けた環境整備が必要となります。

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