エルダー2025年1月号
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2025.122さわれる機会は、以前より限定されてきているという。そこで、豊富な知識と経験を持つ高齢社員の広い視野を活用し、分業化にともなって生じる業務と業務のすき間をカバーしていくため、高齢社員に重要なポジションをになってもらうことも戦略の一つになりうるという。「かつての不動産営業というと、自分で物件の情報を調べて、物件の所有者に会いに行き、物件を任せてもらえたら、自分でチラシをつくるなど、最初から最後まで一気通貫で仕事を行っていました。そういう意味で高齢社員は、多くのノウハウを蓄積している、不動産取引のスペシャリストでもあります」(進士課長)また、「家」という人生でもっとも高価なものを扱うだけに、担当が若手社員の場合、不安に感じる顧客もいる。その際には高齢社員と若手社員がペアを組んで担当しているそうだ。市川課長は再雇用制度が始まった当時を、次のようにふり返る。「定年後再雇用制度が始まったばかりのころは、課長や部長だった人が、管理職ではなくなった後も部内に残り、実際に一緒に仕事をするとどう接してよいかとまどうことも多かったのですが、いまではそれが一般的になりました。いま定年を迎える立場になる方々は、定年後再雇用制度のもとで業務に取り組んできた経験があウォーキングキャンペーンが好評ウォーキングキャンペーンが好評全社あげて取り組む健康イベント全社あげて取り組む健康イベント健康経営Ⓡ(★)にも積極的に取り組んでいる同社では、2023年にウォーキングキャンペーンをスタートした。レクリエーションの要素をとり入れた健康促進イベントで、期間は1カ月ほど。全社員が専用のアプリケーションを使って歩数を測り、組織対抗で歩数の平均値を競い合う。参加特典や賞品として福利厚生に対応したポイントがもらえる仕組みだ。ポイントの使い道には、スポーツクラブの利用チケット、ランニングシューズなど健康にまつわるもののほか、自己啓発や業務での活用を目的に、新聞やビジネス書の購読にあてる人も多いという。「イベント中は、若手社員から高齢社員までたいへん盛り上がります。みんな、毎日アプリケーションにログインして歩数を確認しているのではないでしょうか。特に管理職やエリアの部門長が盛り上げてくれています」(進士課長)分業化が進む業務の隙間を分業化が進む業務の隙間をシニア層のノウハウがカバーシニア層のノウハウがカバー同社において、高齢社員に期待する役割はさまざまあるようだ。業界の流れとして徐々に分業が進んでおり、若手社員が幅広い業務にたずるため、再雇用社員はもちろん、一緒に働く若手・中堅社員も、双方がストレスなく働けていると思います」最後に、進士課長は次のように締めくくった。「以前は55歳で役職定年を迎えると、それが定年というイメージを持つ人もいました。ですが、いまになってふり返ってみると『まだ55歳』です。本来はもっと働けたであろうと想像すると、本人にとっても会社にとってもロスだったのかもしれないと思うこともあります。『生涯現役』ともいわれる時代を背景に、本人たちの働く意思も含めて、会社としても当然やる気のある方には長く働いてもらう方がよいのです。人事として、そういった環境をいかに具現化していくか。つねにアンテナを高く張りながら、アップデートしていかなくてはいけないと思っています」時代のニーズに敏感な同社の姿勢は、先駆けた65歳以降の人事施策につながり、再雇用後の高齢社員の意欲と能力を無駄にすることなく活用に至っている。今後の人事施策の動向にも注目したい。★「健康経営Ⓡ」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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