エルダー2025年1月号
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エルダー27新春特別企画①「令和□6□年度 高年齢者活躍企業フォーラム」基調講演ドル・シニアの経験をリスペクトし、それを活かしたうえで、変化に対応していくことが大切ではないでしょうか。 まずはミドル・シニア本人が、どう生きたいのかを考え、そのための希望の仕事、キャリア、働き方をするためには何を学んだらよいのかを考えていく。この順番でリスキリングを考えることがとても重要だと思います。「学ぶ」ということは、本当の自分を知っていく旅なのだと思います。そういう喜びを感じてもらえる場をつくっていくと、シニアの方々の活躍に必ずつながると私は信じています。 第五の観点は、「社員全員に『私だからの役割』がある組織へ」です。会社の理念のために一人ひとりがかけがえのない存在として、持ち味を活かして役割をにない、それがつながり合って円のようになっていく。すると、多様な人が活き活きと働く組織になっていくと思います。ポストと報酬で動機づけするピラミッド型の組織から、「組織の目的」と「個々の尊重」で動機づけするサークル型の組織へと変えていくのです。 社会心理学者のエドワード・デシが、内発的動機づけという概念を打ち立てています。内発的動機づけとは、心の内側から出てくるエネルギー、モチベーションで、これが整うためには二つの条件、「有能感」と「自己統制」が必要です。がよいのではないか、というのが私の考え方です。ミドル期以降は、本人の経験値を活かして、本人が働きがいを感じられる仕事・役割を本人と相談して決めるなど、本人の意向をふまえて活躍するステージをつくっていくことが重要なポイントになると思います。最近「キャリア自律」という言葉を耳にする人も多いと思います。自分が立てた規律や規則に則って働ける人材であることが、ミドル・シニアになると特に重要になると思いますし、それを会社としてどう支援していくかが大切になると考えています。 第四の観点は、「シニアの『モチベーション』変化に寄り添う」ことです。早稲田大学の竹たけ内うち規のり彦ひこ教授の研究から、わかりやすいモチベーションの変化の定義を紹介します。若いころのモチベーションは「資源獲得の最大化」で、経験を積んで自分の知識・スキルを身につけていくことがモチベーションにつながっていきます。一方でシニア期は、「資源損失の最小化」にモチベーションを感じるそうです。自分がつちかってきた人生や経験値を守りたいという意識に変わっていくのです。このモチベーション変化に寄り添い、本人の意向を聞きながら役割をつくっていくことが大切になります。 そういう意味でリスキリングを考えると、ミ有能感とは、「私だからこの仕事をやるんだ」、「私だったらできる」という感覚、自己統制はそれが任されて自己裁量でできる状況です。これをいかにつくっていくか、マイペースに自己裁量で働ける環境整備をしていくことが大切ではないかと考えます。 最後に、シニアの方々を含めて多様な社員のみなさんが、「この会社で、この仕事をやりたいんだ」という気持ちになる、そういう組織をつくっていただければと思います。

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