エルダー2025年1月号
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エルダー45活や作業での段差や階段でのつまずきやつま先の引っかかりを減少させ、結果的に転倒頻度の減少につながるものと考えられます。また、近年、高齢労働者の転倒リスクとなりうる健康状態が明らかになってきており、それら疾患に対する転倒災害の視点からの定期的なフォローも重要な視点と考えられます。これまで多くの企業においては、階段や段差解消、滑り防止など外的要因からの対策にとどまっているケースが多くみられますが、健康状態や運動機能の低下などの内的要因からの対策を織り込むことにより、さらなる転倒リスクの低減につながるものと考えられます。まとめまとめ7今回、転倒災害の要因のなかでも、特に内的要因を中心に概説しました。転倒災害の特徴として、「いつでも」、「どこでも」、「だれにでも」発生する可能性があり、単に「滑っただけ」、「つまずいただけ」、「注意不足」などと軽視される傾向があります。転倒災害を防止するためには、内的要因を含め、外的要因、社会管理的要因、傷害増幅要因の総合的なアプローチと転倒災害を軽視しない企業レベルでの意識改革が不可欠であると思われます。※6 Shima A et al., J Occup Environ Med. 2024; 66(10):e483-e486. doi: 10.1097/JOM.0000000000003184※7 https://jsite.mhlw.go.jp/saga-roudoukyoku/content/contents/000626649.pdf※8 https://anzeninfo.mhlw.go.jp/information/tentou1501_27.html図表4 転ばないための生体の防御機能 バランス戦略(Balance strategy)図表5 転ばないための生体の防御機能 若齢者と高齢者の比較出典: 川越隆「4 発生要因(内的要因、外的要因、社会・管理的要因、傷害増幅要因)―高年齢労働者の労災としての転倒・転落事故―」 『高年齢労働者のための転倒・転落事故防止マニュアル』日本転倒予防学会監修, 22-26, 2023出典:樋口貴弘, 建内宏重『姿勢と歩行 協調から紐解く』(三輪書店), p192-193, 2015.をもとに筆者作成前後方向への重心の変化足関節戦略(Ankle strategy)突発的な外力を受けたときに、まず、足関節の柔軟性を利用してバランスを維持股関節戦略(Hip strategy)Ankle strategyでバランスが維持できない場合、股関節を曲げることで衝撃を受け流し、バランスを維持踏み直り戦略(Step strategy)足関節戦略重心股関節戦略踏み出し戦略若齢者高齢者それでも無理な場合は、足を踏み出して(踏み直り戦略)バランスを整える加齢とともに足関節戦略は徐々に低下 足首でのバランスが取りにくくなる!F1<F2<F3F1F2F3身体機能身体機能のの変化変化安全・健康対策安全・健康対策とと加齢 による

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