エルダー2025年1月号
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会社の規程に沿った内容であることや規程外の条件で継続雇用をしている従業員がほかにおらず一人だけ特別扱いをすることによって定年後再雇用者において不公平感を抱き、士気や意欲の低下を招くことは容易に想像できることや、合併により救済された事業であるものの、そのなかでも細分化した業務内容としては撤退を要する業務を担当していた従業員であったことから業務が多忙になることもないということをふまえると、提案内容には合理性があったと判断されています。継続雇用時に提示する労働条件3定年後の継続雇用においては、著しく不利益な労働条件の提示によって裁量を逸脱した場合には、継続雇用制度と認められずに、高年齢者雇用安定法違反になる可能性があります。ただし、ここでも一定の裁量があることは認められており、つねに従前と同一の労働条件を提示しなければならないわけではありません。紹介した裁判例では、「同一」の労働条件に対する期待がなければ、保護されないと判断していますが、それでは保護の範囲はほとんどないに等しく、同様の解釈を取る裁判例が主流になるとは考えがたく、合併などによって従前の契約当事者から変更があった場合など特殊な状況を前提にしていると考えた方がよさそうです。新会社の判断が尊重されるにあたって重視されていたのは、合併手続きが進められるなかで説明会が開催されており、その回数や内容も充実していたこと、訴えた従業員以外との間では紛争が生じていないことなど、客観的に見た際に納得感を得ることができるプロセスを経ていたかという点ですので、労働条件を不利益な内容で提示することが許容されたという結論部分だけにとらわれることなく、手続重視の取組みが重要であると考えます。事実ではない情報をSNSによってインターネット上に公表された場合には、法的な手続きで特定または削除の対応が可能です。従業員による投稿と特定でき、名誉棄損として違法な行為に該当するときには、就業規則の定めにしたがって懲戒処分を行うことは可能と考えられます。ASNS上で会社の誹謗中傷を投稿している社員がいるようです。懲戒処分はできるのでしょうかSNS上で、当社の就業環境について、「サービス残業がある」、「上司からのパワハラも放置」、「ブラック企業」などといった記載が見つかりました。投稿は従業員によるものであろうと考えていますが、どのような対応ができるのでしょうか。投稿者が従業員であると特定できた場合には、懲戒処分を行うことは可能でしょうか。Q2投稿者の特定や投稿の削除1SNS上の発信については、実名で行われることが少なく、投稿者が社内の従業員であるのか、退職者など社外のものであるか不明なこともあります。発信者を特定するためには、①発信者とおぼしき従業員からのヒアリングを行うか、②情報流通プラットフォーム対処法(旧名称:プロバイダ責任制限法)に基づく発信者情報開示請求を行うことで特定をしていく必要があります。名誉・信用毀損が成立するような場合には、プロバイダやSNSサービスを提供している事業者は、投稿者2025.148

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