エルダー2025年1月号
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地域・社会を支える地域・社会を支える高齢者高齢者のの底力底力The Strength of the ElderlyThe Strength of the Elderly 少子高齢化や都心部への人口集中などにより、労働力人口の減少が社会課題となるな 少子高齢化や都心部への人口集中などにより、労働力人口の減少が社会課題となるなか、長い職業人生のなかでつちかってきた知識や技術、経験を活かし、多くの高齢者がか、長い職業人生のなかでつちかってきた知識や技術、経験を活かし、多くの高齢者が地域・社会の支え手として活躍しています。そこで本連載では、事業を通じて地域や社地域・社会の支え手として活躍しています。そこで本連載では、事業を通じて地域や社会への貢献に取り組む企業や団体、そこで働く高齢者の方々をご紹介していきます。会への貢献に取り組む企業や団体、そこで働く高齢者の方々をご紹介していきます。株式会社小お川がわの庄しょう(長野県)第2回2025.150地域の食文化の支え手は生涯現役で働く高齢社員長野県の北部、長野市と白はく馬ば村むらのほぼ中間に位置する小お川がわ村むら。ここで約40年間にわたり、信州の食文化の象徴ともされる「おやき」の製造販売を行っているのが、株式会社小川の庄だ。社員数は78人で、平均年齢は55歳。そのうち60~80代の社員は約30人にのぼる。同社には定年がなく、いずれも正社員として働き、郷土食を通じた地域活性化にも貢献している。小川村はもともと養蚕が盛んな地域だったが、安価な海外製品や化学繊維の普及によって養蚕業が衰退。村の行く末に危機感をもった地元住民、地元農協、食品加工会社が共同出資して、1986(昭和61)年に株式会社小川の庄を設立した。「村のお母さんやおばあちゃんたちが、生涯現役で生きがいをもって働ける職場づくり」、「村の宝である地元の特産物を活かした商品づくり」という創業のコンセプトは、現在の会社経営の基礎にもなっている。80歳、10年間でおやき「50万個」観光客でにぎわう郷土料理店小川の庄の直営店の一つ「おやき村」。農家を改造した「こたつ部屋」と、縄文時代をイメージした竪穴式住居風の「囲炉裏の館」から成る店舗で、おやき製造所、そば打ち処も併設されている。店内では、掘りごたつで郷土料理を食べたり、囲炉裏端で「おやき作り体験」をしたりすることもでき、観光客にも人気だ。2024(令和6)年は11月3日から、店内で新そばの提供が開始され、当日は連休中ということもあって大勢の人が訪れた。囲炉裏端にも、おやきを買い求める客が後を絶たず、「野沢菜」に「あんこ」、季節限定の「うの花」から好きな具材を選び、囲炉裏の火で焼かれたおやきを味わう観光客らでにぎわった。その囲炉裏のそばに座り、慣れた手つきで丸いおやきをつくるのは、入社して10年の大お日び方なた文ふみ子こさん(80歳)。「平日はだいたい100~200個、土日・祝日は300~500個のおやきをつくります。単純計算はできないけれど、10年間でおそらく50万個ぐらいはつくっています」と話す。勤務時間は朝8時から夕方5時までで、体力的にはまったく問題ないそうだ。大日方さんらがつくったおやきを、大きな囲炉裏の上で焼き上げるのは、2023年に入社した小こ林ばやし昭あき仁ひとさん(62歳)。料理人として働いていた小林さんは、60歳で前職を辞めたのをきっかけに、小川の庄に入社した。「60歳になってから、再就職で壁にぶつかったのですが、よいご縁があり、ここで働いています。定年退職がないので、できるかぎり、ずっと働きたいと思っています」と話す。同社の権ごん田だ公こう隆りゅう社長は、「会社にとっての財産はやはり社員。だれもが生涯現役を貫き、一人ひとりが輝ける職場をつくっていきたいと思っています」と強調する。現在50代の権田社長自身、「50年後も働いていたい」とのこと。「60歳からの40年間をいかに輝かせるか」が、権田社長の目標なのだ。

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