高齢者高齢者のの底力底力地域・社会を支える地域・社会を支えるエルダー51いことでした」と、明美さんは創業当初をふり返る。大西さんは営業担当として、おやきのPR役をになった。「とにかく、おやきを知ってもらおうと、地元のおばあちゃんを連れて、全国のデパートに実演に行きました」と、大西さん。おやきを焼くための機材を車に積み、自ら運転して、北は北海道から南は九州まで走り回ったそうだ。そんな大西さんらの活動が実を結び、おやきは県の特産物として徐々に浸透。現在は、販売網が全国に広がり、通信販売などでも売上げを伸ばしている。大西さんは60歳を過ぎて営業から退き、2024年4月に、99歳で亡くなった先代から村長を引き継いだ。「まだまだ若いのに、いきなり村長を仰せつかりましたよ」と話す大西さんだが、「村長」と呼ばれるのには、少しプレッシャーもあるそうだ。一方で、自分が地域のために役立っているという手応えも感じているという。今後も「自分が動ける間は、なんとかがんばっていきたいです」と心構えを話す。妻の明美さんは現在、厨房長として、おやき村の「味」をになっている。店内で提供される食事には、明美さんが考案したメニューもあり、なかには商品化されたものもある。「自分が好きでつくったものを、先代の社長が『評判がよい』と、商品にしてくれました。そうやって評価してもらえるのは、すごくうれしいことですね」と明美さん。「好きな仕事だし、やれるまでやる。楽しいですから」と笑顔で語っていた。「高齢になればなるほど輝く」「お互いさま」の気持ちが大切権田社長は、「飲食業は、年を重ねれば重ねるほど味が出ます。高齢になればなるほど輝くのです」と話す。特に、古くからある郷土料理を商品化してきた同社の場合、高齢者の知恵や経験、知識は重要な資源でもある。70歳、80歳を超えた社員の力を活かすためには、「それぞれ通院や介護、あるいは孫の世話などの事情はありますが、『お互いさまだからがんばろう』という気持ちが必要」と、権田社長は強調する。「だれかが休んでも職場がまわるよう、80歳の人でも『私はこれしかできない』ではなくて、何でもできるように学んでいってもらいたい」との考えだ。「年を重ねても、自分たちで考えて仕事をしていくことで、もっともっと輝いていく―」。権田社長は、生涯現役社会への期待を語った。おやきとともに約40年夫婦で郷土の味を広めるおやきを、全国に広めた立役者の1人が、おやき村の「村長」を務める大おお西にし隆たかしさん(81歳)。1986年の創業当初からの社員だ。大西さんの妻・明あけ美みさん(78歳)はおやき村の厨房長を務めており、夫婦でおやきを通じた地域活性化の一翼をになっている。もともと小川村の西山地域の料理だったおやきに目をつけ、商品化を目ざしたのは、同社の先代社長。「おやきは家でつくって食べるもので、それを商品にするなんて、当時は思ってもみな株式会社小川の庄の権田公隆社長夫婦で働く、おやき村村長の大西隆さんと、厨房長の明美さん
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