株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之人事用語辞典■■■■■■■■いまさら聞けない 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。2025.152第53回今回は、労働契約法について取り上げます。前回(2024年12月号)※1で解説した労働基準法と密接に関係するため、あわせて一読いただくと理解が深まると思います。労働条件の合意に関する基本的なルール労働契約法は、労働にかかわる法律の総称である労働法の一つで、労働者(使用者に使用されて労働し、賃金を払われる者)と使用者(使用する労働者に対して賃金を支払う者)間での合意によって成立する労働条件に関する労働契約についての基本的なルールを定めた法律です。まずは、どのようなルールが記載されているか、ポイントを取り上げてみましょう。①労働契約の締結等…労働契約に共通する原則である、労使対等の原則・均衡考慮の原則※2・仕事と生活の調和への配慮の原則・信義誠実の原則・権利濫用※3の禁止の原則(第3条)、使用者は労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容に関し、労働者の理解を深めるようにし、できる限り書面で確認すること(第4条)。②労働契約の成立と変更…労働者と使用者が、「労働すること」、「賃金を支払うこと」に合意すると労働契約が成立すること(第6条)、労働者と使用者が合意すれば労働契約を変更可能となること(第8条)、就業規則※4と労働契約の関係性について(第9条~第13条)。③労働契約の継続および終了…懲戒・解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、権利を濫用したものとして無効であること(第16条)。④期間の定めのある労働契約…有期契約労働者について、使用者はやむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでの間において労働者を解雇できないこと(第17条)、有期労働契約期間を通算して5年を超える労働者が、期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は申込みを承諾したものとみなすこと(無期転換ルール※5)(第18条)。労働契約の内容を考えるうえで注意すべきは、労働条件の最低基準を定めた労働基準法を必ず上回ることが求められている点です。また、第9条~第13条にある通り、就業規則が合理的な内容かつ労働者に周知されている場合は就業規則の内容が労働条件になるものの、就業規則と異なる内容の労働条件を労働者・使用者間で個別に合意していた場合は合意内容が労働条件になり、その条件が就業規則を下回っている「労働契約法」※2 均衡考慮の原則……労働契約の締結・変更において、就業実態との均衡(バランスや釣り合いがとれている等)を考慮し、かつ異なる雇用形態間の均衡も考慮すべきというもの※3 権利濫用……本来想定されている権利の範囲を超えてその権利を行使するため、権利の行使として認めることができないと判断される行為※1
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