■■■■■■■■人事用語辞典いまさら聞けないエルダー53場合は、就業規則の内容まで条件が引き上がる点も押さえておきたいところです。労働契約法は比較的新しい法律労働基準法が、1947(昭和22)年に制定されたのに対して、労働契約法は2007(平成19)年に制定されています。労働契約法の制定が比較的最近であることには、かつては労働基準法や就業規則、労働協約などで一律的に労働条件を定めておくことでこと足りていたのが、就業形態が多様化し労働条件が個別に決定・変更されることが増えたことにともない、個別労働関係紛争が増加したことが背景にあります。それまでは、紛争に関する蓄積された裁判例をもとに形成された民事的ルールをもとに裁判所が判断していましたが、その内容が一般に周知されていたともいいがたい状況がありました。そこで、個別労働関係紛争を防止し、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的として、民事的ルールを一つの体系として労働契約法を制定することになりました。このような経緯から、先に述べた第18条の無期転換ルールが2012年の法改正で追加されるなど、就労状況の変化や労働紛争などの実態に合わせる形で法律は改正されてきました。労働契約法にかかわりの深い直近の動向として触れておきたいのが、2024(令和6)年施行の労働基準法施行規則・有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準の改正です。労働契約の締結・更新のタイミングでの労働条件明示事項が追加されることになりました。①すべての労働契約の締結時と有期労働契約の更新時に就業場所と業務の変更の範囲を明示すること…全労働者対象②有期労働契約の締結時と更新時に、更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容を明示、また更新上限を新設・短縮する場合はその理由をあらかじめ説明すること…有期契約労働者対象③無期転換申込権が発生する有期労働契約の契約更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨と無期転換後の労働条件を明示すること…有期契約労働者対象これらの明示の仕方がよくわからないという場合には、厚生労働省のパンフレットに、詳しいルールとモデル労働条件通知書の例が掲載されているため参照することをおすすめします※6。個別労働紛争解決制度の活用も選択肢の一つ労働基準法は“公的権限(刑事司法や行政機関)”により法の実現を目ざすため、前号に述べた通り、違反した場合の罰金や懲役などの罰則が定められています。一方で、労働契約法は“私人間の紛争解決”により法の実現を図る位置づけのため、直接的な罰則は存在しません。私人間の紛争解決については、個々の労働者と事業主の間の労働契約や職場環境に関するトラブルを未然に防止し、迅速に解決を図るための個別労働紛争解決制度が設けられています。具体的には、都道府県労働局や労働基準監督署に設けられた総合労働相談コーナーへの総合労働相談に対して、都道府県労働局長が解決の方向性を示し紛争当事者間の自主的な解決を促進する助言・指導、または都道府県労働局に設置されている紛争調整委員会のあっせん委員が紛争当事者の間に入って話し合いを促進するあっせんにより紛争解決を図っていきます。労働契約について、労働者・使用者間でよく話し合い、理解したうえで運用していくことに越したことはありませんが、トラブルや紛争に至った場合は、労働者・使用者にかかわらず本制度を活用することは、有力な選択肢の一つといえます。* * *次回は、「労働安全衛生法」について取り上げます。※4 就業規則……本連載第19回(2021年12月号)をご参照ください。https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202112/html5.html#page=56※5 無期転換ルール……詳細なルールや留意事項があるため、厚生労働省のポータルサイトなどを確認のことhttps://muki.mhlw.go.jp※6 「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?」https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001298244.pdf
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