エルダー2025年1月号
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2025.156※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します三み谷たに文ふみ夫お 著/ぱる出版/1540円角かど野の然なり生お 著/光文社/946円こうして社員は、やる気を取り戻す経営の力と伴走支援「対話と傾聴」が組織を変える賃上げや働き方改革など企業を取り巻く環境が激変するなか、中小企業には、自ら自社を変革させていく勇気と挑戦が必要といわれている。本書は、元中小企業庁長官の著者が、中小企業支援活動のなかで推進し全国に広めてきた「伴走支援」の考え方を整理した一冊。本書で述べられている「伴走支援」とは、企業経営者に対して「対話と傾聴」を通じて寄り添いながら、経営者がより本質的な経営課題に気づき、納得することにより、主体性を持って会社の自己変革に取り組み、組織が本来持っている潜在力を引き出していく支援をいう。考え方の要素は、「対話と傾聴」、「課題設定力」、「自己変革と自走」の大きく三つに集約できるという。第1章および第2章では、伴走支援を現場で実践してきた経緯や考え方を、第3章では伴走支援の枠組みについて説明。伴走支援を取り入れた中小企業のさまざまな事例に触れながら、経営者の心が変わる過程を紹介している。著者は、「会社の強みや潜在力を引き出し、さまざまな環境変化を乗り越えていく手段があることを知ってほしい」と記すとともに、「伴走支援を受け入れる姿勢が大切であることも訴えたい」と経営者への思いを綴っている。業績アップのためには、社員のモチベーションアップが不可欠だが、「せっかく入社した社員がやる気を失っている」、「指示待ち社員ばかり」といった職場は少なくないようだ。社員がやる気を喪失する要因は、さまざまあるだろう。やる気を取り戻すために、会社は何をすべきか。本書は、この問いに対して、社会保険労務士で産業カウンセラーでもある著者が解説する。1テーマごとに、「事例」、「マイナス→ゼロ」、「ゼロ→プラス」という3段階で、まず、社員のやる気が出ない要因とその対処法について社会保険労務士の目線で説明してマイナスをゼロまで戻し、次に、産業カウンセラーの目線でゼロをプラスに変える方法を提案している。例えば、テレワークが禁止など働き方の選択肢が少ないという職場の事例では、「禁止」ではなく、いかに「活用」していくのかに頭を切り替え、テレワーク導入・活用に向けた環境づくりを説明(マイナス→ゼロ)。次に、テレワークで社員が「さぼる」という認識を「期待」に変えて任せてみる、そのために「信頼関係」をつくる努力も必要(ゼロ→プラス)、と説いている。社員がやる気の出る職場づくり、離職者の少ない会社づくりのヒントが得られる一冊だ。社労士で産業カウンセラーの著者が、二つの目線から、やる気が出ない要因と対処法を説く中小企業の経営層に向けて、会社の潜在力を引き出し発揮させていく「伴走支援」とは

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