エルダー2025年1月号
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エルダー57濱はま口ぐち桂けい一いち郎ろう 著/朝日新聞出版/1045円上うえ田だ泰ひろ己き 著/文藝春秋/1078円山やま田だ 実みのる 監修/ナツメ社/1540円60歳以上の労働災害による死傷者数が増えるなか、事故の種類をみると「転倒」が最多となっている。転倒災害防止には、作業環境の改善が大事だが、特に高齢者の場合、転倒予防のための体づくりを行うことにも取り組みたい。本書は、年齢を重ねてからはじめる筋トレの方法を紹介し、いつまでも元気に過ごすために、生活習慣に取り入れることをすすめている。はじめに、簡単なテストで筋力をチェックし、筋力レベル1~3にあわせて、筋トレを選んで実践できる内容だ。いすに座って両足を上げる体幹トレーニングや、片足立ちでバランスを取るお尻と足のトレーニングなど、いずれも1分程度でできる筋トレ法を、部位別に写真を使ってわかりやすく解説。また、筋トレがもたらすメリットや、筋トレ効果を上げる食事や睡眠に関するアドバイス、元気に食べるためのオーラルトレーニングについても取り上げている。筋肉量は、40代を境に減少するスピードが増していくという。しかし、本書の内容の筋トレを開始し、習慣化できるようになると、加齢変化のスピードダウンを実感できるはず、ともいう。転倒による労働災害を防ぐためにも、職場で取り入れてみるのもよいのでは。睡眠は謎が多い活動として、その研究は長く停滞していたそうだが、ここに来て急速に進歩し、新常識が生まれる可能性があるという。その一つが、「睡眠は人間の成長、特に脳の神経細胞の成長に必要不可欠な、極めて大切な時間である」ということ。成長は若年層にかぎらず、ヒトの無数の神経細胞は年老いても日々成長していることから、睡眠はすべての人にとって、「健康のために、何より人間の知的活動のために、極めて重要な時間」と本書の著者はいう。本書は、生命の時間・情報の解明、睡眠の研究に取り組み、注目を集めている上田泰己氏が、これまでの睡眠研究の流れから、新しい研究と発見の詳細と技術の解説、現在取り組んでいる睡眠検診のこと、そして、睡眠研究の未来についてまで解説。むずかしい研究内容も「睡眠はアクティブな活動だった」、「脳は眠って覚えて、起きて『探す』?」などのわかりやすい文言で表現している。また、日本人の睡眠時間の短さと、睡眠が関係する病気とその実態に触れ、健康診断のメニューの一つとして睡眠を測定する「国民的睡眠検診」の必要性などを説いている。健康寿命を延ばして生涯現役を実現するうえでも、興味深い最新情報が満載である。なぜ日本人の賃金は30年間横ばいなのだろう。また、そもそも「最低賃金制」とはどういうものなのか。今後の賃上げの行方は……。本書は、ここ数年大きな政策課題となっている賃金の問題について、日本型賃金の仕組みを過去から紐解いて分析・検証し、賃金制度の基本をまとめた一冊。著者は、労働政策研究・研修機構の労働政策研究所長を務める濱口桂一郎氏。冒頭の序章では、賃金制度の前提となる雇用システム論の「基礎の基礎」として、ジョブ型、メンバーシップ型の雇用契約、賃金制度、労使関係について整理。続いて、第Ⅰ部から第Ⅲ部までは、賃金の「決め方」、賃金の「上げ方」、賃金の「支え方」の三つの角度から、日本の賃金のあり方について解説している。第Ⅰ部では、約150年間の賃金制度の推移を概観、第Ⅱ部ではおもに労使交渉の歴史を、第Ⅲ部では最低賃金制などについて解説している。そして終章では、「なぜ日本の賃金は上がらないのか」という問題について、その「根深い構造」を考察し、今後の賃上げはどういう方向に向かうべきなのか、方策を検討している。賃金にかかわる企業の担当者や賃金に関心のある人々にとって、有益な一冊といえるだろう。一生、自分の足で歩くための らくらく1分間筋トレ脳は眠りで大進化する賃金とは何か職務給の蹉跌と所属給の呪縛運動を習慣化して、加齢変化のスピードダウンをはかろう年齢にかかわりなく、「睡眠は健康にとって極めて大切な時間」!日本型賃金の「決め方」、「上げ方」、「支え方」とは? 制度の基本を整理し、賃上げの方策を探る

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