エルダー2025年1月号
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2025.14集団で評価されるなど一体的に運用しています。―新制度スタート以降の社員の反応はいかがでしょうか。奥村 スタートして1年未満なので、具体的なヒアリングはまだですが、以前の制度は定年前の6~7割の給与水準だったので、再雇用社員に対して上司は、「仕事を依頼したくても遠慮していいにくい」という雰囲気もありました。しかし、社員と同様の処遇水準になり仕事も依頼しやすくなったという声はあるようです。また、再雇用社員の方も以前よりモチベーションが上がったという声も届いています。―65歳以降の働き方の仕組みはどうなっていますか。奥村 高度専門職コースの嘱託社員については、本人が希望し、会社としても引き続き働いてほしい人は、65歳以降も同じ処遇で雇用を継続します。もともと高度専門職コースで働く社員は、再雇用社員約230人の15%程度と少ないですから、実際に65歳以降も働いている人は十数人程度です。専任職と専属職については65歳で終了となります。―高齢社員のさらなる活躍をうながすための取組みがあれば教えてください。奥村 年齢ごとの節目にキャリア研修を実施していますが、57歳時にはこれまでのキャリアをふり返り、自身の経験や強みを再認識して定年後のキャリアを描き、具体的なアクションを考える研修のほか、キャリアカウンセラーによる嘱託社員の個別面談なども実施しています。リスキリングについては、自分でテーマを選択して学べるeラーニングメニューを数多く用意しています。世間ではリスキリングが話題になっていますが、当社の社員にとってはいまに始まったことではありません。IT業界は日進月歩で技術が進化していますし、世界で一番新しい技術にキャッチアップするのが当社の強みでもあります。逆につねに学び続けなければ生きていけない世界であり、そのことは社員がもっとも自覚していると思います。―これから高齢者雇用に取り組む企業へのアドバイスがあればお聞かせください。奥村 当社では、徐々に給与水準を引き上げるとともに、になう業務や期待する役割のレベルを上げてきました。会社として社員にどのような期待をしているのか、きちんとメッセージを出していくことが大切だと思います。ダイバーシティの話もしましたが、シニアの持つ知恵やスキルを活用し、今後広がっていく高齢者マーケットでの新しいサービスの創造も期待しています。やはり人事制度の変更はコストではなく、人的資本への投資と考えるべきなのでしょう。年齢、性別を超えて、いろいろな考えや意見を出し合う土壌を構築することが、会社の成長にもつながっていくと信じています。(インタビュー/溝上憲文 撮影/中岡泰博)大きな制度改定をするうえで大切なのは社員の声を聞きながら柔軟に対応すること伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 執行役員 経営企画グループ 人事総務本部 本部長奥村弘幸さん

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