エルダー592025.1 January ニュース ファイル 「生涯現役社会の実現に向けた地域ワークショップ」を開催当機構(JEED)からJEEDでは「高年齢者就業支援月間」である10月、各都道府県支部が中心となって「生涯現役社会の実現に向けた地域ワークショップ」を開催した(一部は11月に開催)。地域ワークショップは、高齢者雇用に関心のある事業主や人事担当者を対象に、学識経験者の基調講演、ならびに高齢者雇用に先進的な企業の事例発表で構成され、各地域の実情をふまえた実践的な情報を提供している。今回は2024(令和6)年10月24日(木)にJEEDの奈良支部が主催した地域ワークショップ「高齢社員に力を発揮してもらうために~人事制度『賃金と評価』」の模様をレポートする。開会のあいさつに続き、奈良県内における高齢者雇用の概要について、奈良労働局職業安定部職業対策課の野の澤ざわ俊とし雄おさんが報告。「県内企業の65歳以上の就業率が全国平均を上回っている。要因として年金の繰下げ受給希望者が増えたことなどが考えられる」と指摘し、JEEDが支援する65歳以上の雇用推進のための助成金制度、および70歳雇用推進プランナーによる相談助言活動の活用を呼びかけた。続いて、愛知学院大学経営学部の関せき千ち里さと教授が登壇し、「高齢社員に力を発揮してもらうために」をテーマに、企業の実例を交えて講演。生涯現役を目ざした高齢者雇用制度の好事例をあげ、「健康でやる気があり、自分の得意分野が明確で、職場の理解と支援がある場合は年齢に関係なく働き続けられる。各世代の持ち味を活かせている点も大きい」と指摘した。また、ジョブクラフティング※の手法を紹介し、高齢者自身が能動的にモチベーションを向上させ、仕事に対する意義を見出すよう、企業がうながせるとよいとアドバイスを送った。休憩をはさんで、企業の事例発表が行われ、五ご條じょう運うん輸ゆ株式会社の松まつ尾お和かず彦ひこ取締役総務部部長が登壇した。同社は1970(昭和45)年奈良県五條市で創業し、ここ15年間の業域拡大により社員数が15人から150人へと大幅に増員した成長著しい地元企業だ。地場の運送・倉庫管理事業から、通販物流事業、物流アウトソーシング事業に新規参入し、業務拡張にともない人材確保のために高齢者を多く採用。2017(平成29)年に定年制を廃止し、短日・短時間勤務を可能にして高齢社員のニーズに柔軟に対応しており、「高齢社員が持つ可能性を、適材適所で発揮してもらえていることは当社の財産。高齢社員の力が安定経営には必要で、年齢・経験を問わず、責任ある仕事に就いてもらい、奈良県での「地域ワークショップ」の様子任せて経験を積んでもらうという人材育成を今後も進めていきたい」と方針を示した。続いて、70歳雇用推進プランナーの北きた場ば好よし美みさんをコーディネーターに、五條運輸の松尾総務部部長と関教授がパネリストとして登壇しパネルディスカッションを実施。五條運輸の取組みとその成果をふまえ、松尾総務部部長に質問が投げかけられた。北場プランナーが定年後の給与水準と継続雇用の条件について質問すると、「基本的な給与水準は変わらないが、状況に応じて面談を行い、本人の希望と実態に合わせて対処している」と応じ、関教授からは、高齢社員が職場に与える影響について質問があり、「豊かな人生経験から生じる意見が新たな視点を提供している。年齢の壁を越えて意見を出し合う環境が整っている」と回答した。関教授は同社の取組みを「経営陣や人事の役割として個人と組織の志をすり合わせ、ビジョンや価値を明確にして社員が働きやすい環境を整備している」と述べ、北場プランナーは「『よい会社は自分がつくる』という思いで一人ひとりが取り組んできた結果、だれもが幸せになれる会社づくりにつながっている」と評価した。最後に、公益財団法人産業雇用安定センター奈良事務所所長の祝いわい雅まさ則のりさんが登壇し、キャリア人材バンクの概要を説明。経験豊富な60歳以上の人材は働く意欲と能力があり、近年再就職数が増加していると推移データを示し、キャリア人材の再就職支援を誓った。開演中、資料を手に取り熱心に目を通す参加者の姿が見られ、地域ワークショップは熱気冷めやらぬまま閉会した。※ジョブクラフティング……働く人が自ら仕事に対する認知や行動を変えることで、やりがいを感じない仕事をやりがいのあるものへと変える手法
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