エルダー2025年1月号
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2025.162ソーセージの腸詰め作業。練ったばかりの生地を腸に充てんした後、均等な長さでひねって成形していく「ものづくりマイスター」として若手技能者の育成にも貢献し、これまで「横浜マイスター」、「現代の名工」、「黄綬褒章」など数々の表彰を受けている。品質・味を一定に保つために独自の方法を考案ハム・ソーセージづくりでは、季節などに左右されず、つねに一定の品質を保つことがむずかしいという。「ドイツで何十年も経験を積んだ職人でも、4年に一度でも同じ味が出せればよいほうだといわれています。添加物を目一杯入れてつくれば別ですが、手づくりでつねに同じ品質や味を保つのは、それほどむずかしいのです」季節による違いがあらわれやすいのが、ソーセージの生地を練ったりほかの材料と混ぜ合わせたりする「カッティング」の工程だ。カッティングには、刃と皿がそれぞれ回転する「カッター」と呼ばれる機械を使う。一般にカッティングでは、生地の温度をみて14℃を超えないように調整する。14℃を超えると肉が分離してしまうためだ。しかし、その方法だと温度の上がりやすい夏場は練りが少なく、逆に冬場は温度が上がらない分、練りすぎて肉の味がしなくなってしまう。そこで中山さんは、温度に左右されずにすむよう、刃の回転と皿の回転を考慮したカッティングの計算式を考案。ソーセージの種類ごとに最適なカット数を決めることで、夏場も冬場も一定の品質を保つことに成功した。また、肉本来の味や食感を大事にするため、添加物をなるべく使わないことにこだわっている。「添加物をできるだけ少なくするため、塩漬け期間を長く取るようにしています。当店でも微量の添加物は使用しますが、その量はごくわずかです」「いまは何でも全自動で簡単にできてしまうが、それではつまらない。試行錯誤を積み重ねることに、ものづくりのおもしろさがある」

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