エルダー63現在は本店を息子に任せ、市街地から離れた場所に自身の店である緑山店を開いた。「親が一から十まで指示すると子どもは育ちません。ですから、一通りのことを教えたら、あとは本人に任せ、親は引っ込んで口を出さない。それが子どもを育てる秘訣かな」店舗運営のかたわら、地域のイベントに積極的に出店したり、子どもから大人までを対象としたソーセージ教室を開催したり、子どもたちに正しい食肉加工の知識を教える活動にも力を注ぐ。「安心安全でおいしいソーセージやそのつくり方を、もっと多くの人に知ってもらいたい」と中山さん。人とのふれあいを楽しみながら、おいしいものづくりに励む、充実した毎日を過ごしている。株式会社シュタットシンケン青葉台本店TEL:045(981)5584緑山店(マイスターの工房)TEL:045(511)7876(撮影・福田栄夫/取材・増田忠英)子どものころ抱いた夢を実現身につけた技能を後進に伝える食肉加工の道を志したのは小学校2年生のとき。食肉卸業を営む父が買ってきたソーセージの味に感動し、「いつかこの味を超える、世界に一つのソーセージをつくりたい」と思ったのがきっかけだった。18歳で家業に就くと、屠と殺さつから解体、精肉まで一通りの技術を習得。肉を見ただけで、どのような加工に向いているかを見きわめる能力も、卸業を通じて身につけた。そんななか、ハム・ソーセージづくりの名人の存在を知って弟子入りし、5年間、研鑽を積んだ。名人のお墨つきを得て店を始めたものの、当初は製品が売れず、閉店後に近所を回ってチラシを投函した時期もあった。やがて、「あそこのソーセージはおいしい」という評判が口コミで広がり、3年ほどで店は軌道に乗るようになった。ソーセージの生地。この日つくっていたのは、人気の「だだちゃ豆フランク」。このほかにも、地元産の野菜を使ったソーセージなど、さまざまな製品を開発してきた開発に最も苦労したという白カビサラミ。カマンベールチーズと同じ白カビ菌を使用。徹底した湿度・温度管理が必要で、失敗を何度もくり返し、製品化まで3年をかけた店名の「Stadt Schinken」はドイツ語で「街のハム屋さん」という意味。緑山店は、市街地から離れた場所にある隠れ家的な工房兼店舗だロースハムやボンレスハム、ベーコンなどは、塩漬けに3週間をかけて、じっくり熟成させる店内に飾られている、中山さんの知人が描いたシュタットシンケン緑山店の外観。黄色い壁が目印ソーセージの生地を腸詰めする際は、指先で腸の伸び具合を確認、調整しながら詰めていく白カビがきれいについた白カビサラミ。この後、湿度70%、温度12℃で1カ月熟成させる vol.347
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