エルダー2025年2月号
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シニア社員の配置は需要重視の「適所適材型」でしなど働き方の制約化が進んでいます。次に評価・処遇制度について目を向けると、働きぶりを評価する企業が増えつつあるとはいえ、評価をしない企業はまだ少なくない。さらに賃金をみると、定年時に一律に下げ、その後の昇給はないという企業がまだまだ多い状況です。本来は、仕事内容や能力、成果に応じて決めるのが賃金決定の基本原則ですから、その原則から外れた状況にあるのです。つまり、評価しない、あるいはがんばっても賃金が変わらないということになり、このことは、「会社は成果を期待していない」、あるいは「現役並みの活躍を期待しない」といったメッセージを、シニア社員に送っているということになります。したがって、現状の人事管理は「福祉的雇用型」と呼ぶにふさわしい人事管理といえます。福祉的雇用型の人事管理を行っている以上、シニア社員の働く意欲は落ちますし、働きぶりはそれなりになります。最初にお話ししたように、シニア社員を戦力化しなければならない状況にあるわけですから、こうした福祉的雇用型の人事管理に将来性はありません。では、福祉的雇用型をどう変えていくのか。この点を考えるにあたっては、現状をふまえて、「60歳定年+再雇用」を前提に人事管理を考えていきます。シニア社員の人事管理をつくるにあたっては、シニア社員がどういう特性を持つ社員なのかをふまえなければいけません。人事管理は、社員の特性に合わせてつくるものなので、それを確認する必要があるのです。考慮すべきシニア社員の特性はいくつかあり、特に、定年60歳後の再雇用は65歳までが一般的であることを念頭に置くと、「雇用期間は短い」ということがあげられます。つまり、シニア社員は短期雇用が前提ということになります。定年前の社員のように長期雇用を前提として、最初に教育を行って育て、あとから成果を得るということにはならず、いま持っている能力を、いま活用して、いま払うという特性の社員になります。これをここでは「短期雇用型人材」と呼びます。これがシニア社員の基本特性です。それに対して定年前の正社員は、若いときに育てて能力を上げ、その後に成果を出してもらい、処遇はそれに対応して長期的な視点に立って決めるという意味で「長期雇用型人材」になります。そうすると、シニア社員には短期雇用型人材の人事管理が、60歳以前の社員には長期雇用型人材の人事管理が必要になるので、企業全体の人事管理はこの二つを組み合わせた「一国二制度」型の人事管理が必要になります。この大枠のもとで、具体的に人事管理をどう設計すればよいか。制度設計をするうえでの基本的な考え方をお話しします。「処遇決定」の面についてお話をしたいと思います。を前提にすると、定年で雇用契約はいったん終了し、雇用契約を再締結することとなります。つまり、雇用契約の再契約となるので、再雇用は中途採用の一形態といえる「社内中途採用」といえます。そうすると、通常の中途採用と同様に、企業は「シニア社員から何を買いたいのか」、シニア社員は「会社に何を売りたいのか」を明確にして、活用を決めるという視点が重要になります。これを「シニア社員がいるから仕事をつくる」としてしまうと、「置いてやる雇用」となってしまいます。務上の人材ニーズは何かを明確にして、その人材ニーズを満たすシニア社員を探して配置するという、人材ニーズに重点を置く「需要サイド型」である必要性があります。つまり、「適所適材型の配置」が必要なのです。現実にはこのここでは、人事管理で重要な「活用」の面と、まず「活用」については、「60歳定年+再雇用」したがって、シニア社員の活用の基本は、業2025.28

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