エルダー2025年2月号
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シニア社員に求める「社内中途採用」の視点通りにはいかない場合も多いのですが、「シニア社員がいるから仕事をつくる」という供給サイド型をとると、どうしても福祉的雇用型になってしまうので、シニア社員活用には需要サイド型の視点を持っていただきたいと思います。では現実の活用施策はどうなっているのかというと、人事と現場の管理職が相談して決めるやり方が主流になっていますが、これを支えるためにさまざまな試みが行われています。例えばシニア社員向けの社内公募制度を導入する企業があります。これは社内公募ですから、最初に「この業務に、この人材がほしい」と企業が募集をして、あとからシニア社員が手をあげるという順序なので、需要サイド型といえます。次に処遇面についてですが、賃金を決める際には、「社員タイプにどう合わせるか」と、「活用施策にどう合わせるか」が課題になります。この二つが賃金決定の基本原則になります。すでに説明したように、シニア社員の社員タイプは「短期雇用型」で、活用施策は「適所適材型」です。そうなると賃金は仕事の重要度で決めるのが合理的になります。「仕事基軸の賃金決定」しか手はないと、私は思っています。したがって、定年を迎え再雇用になった際に、仕事内容に変化があれば、賃金も変わることになります。例えば、現職の継続でも職責が低下する場合は、職責の低下部分だけ賃金が下がるという決定の仕方が必要だろうと思います。これが基本原則となりますが、日本にはやや複雑な事情があります。それは定年前の賃金が年功賃金を採用している企業の場合です。若いときは成果に比べて賃金を低めに、高齢期は高めに設定するのが年功賃金の理論モデルです。そのため定年時の賃金は成果を上回る水準になり、上回った部分は、若いときに低めであった部分の後払い部分になります。そうなると、定年後は、この後払い部分を、調整しなければなりません。定年後のシニア社員の賃金は、仕事の内容の変化と年功賃金の調整をどうするか、この二つを考えて決定することになります。適所適材の活用あるいは配置と、仕事基準の賃金決定を重視する人事管理は、いわゆるジョブ型の人事管理の一形態であると思っています。以上が会社に求めることです。次に、シニア社員に求めることについてもお話ししたいと思います。先ほど、定年後の再雇用は「社内中途採用」という話をしましたが、シニア社員には、この視点を持って、自分は「何を売りたいか」を、しっかり考えて会社に提示していただきたいのです。業務上のニーズ、つまり職場で何を求められているかを考え、自分はどのような役割を通して会社、職場に貢献するのかを考えてほしいと思います。となので、ぜひともシニア社員の方には「自分は会社に何を売るのか」という視点を持ってほしいと思います。これが一点目です。しいということです。65歳、70歳、もしかしたら75歳と、職業生活が長くなってきています。その長い間、「上り続ける」キャリアはありえないと私は思っています。シニア社員のみなさんは、若いころより、よりむずかしい仕事、より高いポジションを目ざしてがんばってきた、つまり「上り続ける」キャリアを続けることでがんばってきたわけですが、それを65歳、70歳、のビジョンを変えなければいけません。つまり「上向指向型」から「水平指向型」、あるいは「降りる指向型」へとキャリア転換が必要になります。こうしてキャリアを転換すると、例えば、責任ある仕事から一担当者への転換など、役割転換が起こることになり、それに対しては気持ちの面の切り替えが非常に重要になります。これは通常の中途採用であればあたり前のこもう一つは、キャリアの考え方を転換してほエルダー975歳まで続けるのはむずかしいので、キャリア特集生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜開催レポートⅠ〜

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