エルダー2025年2月号
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定年の「雇用終了」機能は実質的に喪失しているつまりキャリアビジョンを転換して役割が変われば、「働く意識・行動と能力」が変わるということを認識し、その再構成の準備をしてほしいと思います。例えば、部下をしたがえて責任ある仕事をになってきた管理者でも、職責が下がって一担当者になれば、元部下と同じ一社員です。それを意識して行動しなければなりません。あるいは、例えば、苦手なエクセルを使った業務を「これ、よろしくね」と任せられる部下はもういません。エクセルを勉強しなくてはならず、学び直しが必要になってきます。これは60歳になって取り組んでも間に合わないと思いますので、将来どのような役割を果たしていくのか、そのためにどういった意識・行動・能力の再構成をしていくのか。こうしたキャリアビジョンを描くことに、定年の10年前には取り組んだ方がよいでしょう。最後に、定年延長についてお話ししたいと思います(図表参照)。ら、「日本の企業における定年は60歳だ」と思っている人が多いのではないでしょうか。ですが、法律では「希望者全員65歳までの雇用を確保すること」が義務化されていますので、日本はすでに「実質65歳定年時代」にあると考えてほしいのです。というのが定年制の基本機能ですが、60歳定年制は、その機能を実質的に失っており、もう従来の定年制ではないという認識が必要です。ているのか。社員がシニア社員になっていく際にどのようにキャリアや役割を転換するかを考えることを促進する。このキャリア・役割転換促進機能が定年制のもっとも重要な機能になっているのです。に考える必要があります。定年延長も再雇用も、シニア社員を戦力化する点では同じですし、その際の人事管理も基本的には何も変わりません。するのかをあらためて考えていただきたいと思います。従来の定年制は、お話ししたようにキャリア、役割転換促進装置として機能しています。定年を延長するとその機能がなくなることになるので、定年延長をする際には、従来の定年制に替わるキャリア、役割転換促進装置をどうつくるかを考えてほしいと思います。つまり、年齢を理由にして「雇用を終了する」では、いまの定年制は、どんな役割を果たし定年延長をどうするかは、こうしたことを前提ですから定年延長をするときは、何を目的と図表 定年延長の際に考えるべきこと・ 実質65歳定年制時代の 到来により定年の機能は 「雇用終了」から 「キャリア・役割転換促進」へ2025.210※ シンポジウム配布資料を基に作成❷ 変わらない定年延長と 再雇用への対応❸ 定年延長の際に 考えるべきこと❶定年の機能変化60歳定年制を採用している企業が多いことか・ 定年延長、再雇用にかかわらずシニア社員のキャリア・役割転換が必要・ 戦力化のための人事管理は定年延長でも再雇用でも 変わらない ・ 何を目的に定年延長を 行うのかを考えること・ 旧定年制に代わるキャリア・役割転換促進装置を どう構築するのか

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