ているという声もあります。ローテーションを巡る問題についてお聞かせください。中村 ローテーションは、さまざまな経験をするという意味では必要だと思っており、会社として変える必要はないと思っています。仕事、キャリアが多様になることで、さまざまな課題も生まれるので、その意味でローテーションは必要です。ただし、かつてのように「何年勤務したら転勤をする」というような、機械的に配置を変えていくという発想はもうありません。社員が自律的にキャリアを考えられるよう、マネージャーが本人と話をしたうえで、ローテーションを考えていくことが必要だと思います。菊岡 当社はローテーションがあまり活発ではない会社で、スペシャリスト志向の育成を昔からやってきた会社といえます。街の開発や、大きな建物をつくるといった、規模の大きい仕事が多く、一人前になるには年数がかかるところが影響しているのかもしれません。エンゲージメントの調査をすると、非常にスペシャリスト志向が強く、自分が手がけている仕事に誇りを持って愛している社員が多いです。スペシャリストで同じ仕事にずっと就いている人にとっては、ジョブチェンジはハードルが高いですから、副業という機会を使って違う世界に触れてみようという意図から、2022年度に社内外の副業制度を導入しました。大木 すね。菊岡 人事制度体系自体は職能資格制度、職能資格がベースになっており、ジョブ型に移行したというわけではありませんが、ジョブ型的に採用・配置・育成を伝統的にやってきたところはあるかもしれません。佐治 当社でもルールに基づいてローテーションや配置をするという仕組みはありません。私は入社してからずっと人事の仕事をしていますが、そのような人もいれば、3〜5年で違う職場に変わる人もいます。もちろん、一人ひとりの力を最大限に発揮してもらうことが大前提です。一方で知恵の偏在というのは明らかにあるので、人材育成という観点からも、会社主導の配置転換は絶対に必要だと思っています。ただ、今回の定年延長で働く期間が長くなり、いままでとは違う仕事にチャレンジできるような仕組みがあったほうがよいのかなと思っています。例えば、将来ベテラン層になったときに、思い切ってやってみたいこと、じつはチャレンジしたかったことなどがあれば、本人の意向を確認したうえで、その準備ができる場は用意していく必要があると思います。長いもともとジョブ型に近い仕組みなので2025.234
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