エルダー2025年2月号
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なります。こうなると車の運転がむずかしくなったり、字が読みづらい、転倒しやすいなど、日常生活にも支障を来すようになります。さらに、行動に制限が生まれ、外出機会が減り、社会的に孤立する――ということになりかねません。加齢による目の不調を総称して「アイフレイル」といいます。「アイフレイル」の「フレイル」という言葉は、年齢を重ねるとともに心身が弱った、健康と要介護の中間に位置する状態のことです。視機能が低下する「アイフレイル」もまた、自立した生活を困難にする要因となります。アイフレイルのベースとなるのは、加齢による目そのものの変化です。例えば、目の血管が硬くなり動脈硬化を起こしたり、酸化ストレスによる慢性炎症が起きたり、視神経がもろくなったりします。網膜で光刺激の情報を処理する神経節細胞は30代に比べて70代では15〜20%ほど減少し、視野の感度低下につながります。レンズのように焦点合わせをする水晶体は加齢により硬くなり、ピントを合わせる力が減少していきます。これが老眼です。さらに年をとると透明だった水晶体は白く濁ります。これが白内障であり、進行すると手術が必要になります。このような理由から、年齢を重ねることで、ピントを合わせる力やくっきりと見る力も低下していくのです。紫外線、手術による侵襲、薬の副作用などの「外的要因」が拍車をかけます。見えづらさを感じても目に関する正しい情報が手に入らない、周囲に相談する人がいないといったことも、目の健康維持に負の影響を与えます。目が見えづらい方は社会参加も減少することが報告されており、ますます悪循環に陥ってしまいます。脂質異常症などの「内的要因」です。これらはいずれも視機能にかかわる血管や神経の働きに悪影響を与えます。しかし、眼底検査をすることで、これらの病気のリスクを目から判断することもできます。例えば、高血圧患者さんの眼底に軟性白斑という変化が出ていたら3年後に脳卒中を起こすリスクは7倍程度に上昇します。うえに、さまざまな外的・内的ストレスが加わることによって目の機能が低下した状態、また、そのリスクが高い状態」をアイフレイルといいます。私たちは二つの目を持っているので、片目が悪くてももう片方の目がその機能を補填してしまい症状が出にくいという弱点があります。現在、日本の視覚障害の一番の原因である緑内障は、見える範囲が狭くなってしまう病気です。しかし、初期には視野が完全に欠けるわけではなく、部分的に感度が低下するだけなので、自分で気づくことはできません。緑内障で視野が本当に大きく欠けるのは、相当進行してからであり、そのときに治療を開始しても遅すぎます。日本では疫学調査の結果、緑内障のじつに90%が未発見であるといわれています。糖尿病患者さんの15%程度に発症している糖尿病網膜症も同様に、初期には自分で気づくことができません。目の奥が出血していても、中心視力をつかさどる網膜のなかの黄斑部というところに出血がなければ視力は落ちないのです。詳しい検査をして、かなり進行している、という状態でも、本人はまったく自覚がないことが恐ろしいところなのです。見え方の悪い状態はさまざまです。「かすむ」、「ゆがむ」、「暗い」、「まぶしい」、「虫が飛ぶ」など、いろいろな症状が重なって「見えづらい」状態とこうした加齢による衰えに、生活習慣や喫煙、もう一つの大きな要因が、糖尿病や高血圧、このように「加齢にともなって眼が衰えてきた加齢 による453エルダー47目目のの病病気気のの多多くくはは初初期期ににはは自自覚覚ででききなないい「「外外的的要要因因」と「」と「内内的的要要因因」が」がなないいでですすかか??そそれ「れ「アアイイフフレレイイルル」で」ではは目目ににスストトレレススををかかけけるる身体機能のの変化変化身体機能とと安全・健康対策安全・健康対策

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