エルダー2025年2月号
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退職金規程違反を理由に退職金を減額・不支給することは可能でしょうか当社には退職金制度があるのですが、懲戒事由に相当する事由がある場合に退職金支給と懲戒事由の存在Q11退職金制度は、必ずしも会社が設けなければならない制度ではなく、また、会社ごとにその内容は異なります。しかしながら、日本では退職金規程を定めたうえで、ご質問のような退職金の減額または不支給の規定を設けている会社は少なくありません。退職金の請求権は、退職する労働者にとって非常に重要な権利であり、勤務した期間が長くなればなるほど支給額も増える傾向にあることから、継続的に勤務するほどその重要性も増していきます。そのため、退職金の減額や不支給についても、一定程度制限されることが一般的です。とはいえ、まったく減額や不支給ができないとも考えられておらず、そのことは、退職金の性質とも関連しています。退職金の性質について、裁判例では賃金の後払いとしての性質と功労報償としての性質をあわせ持つといわれています。賃金の後払い的性質については、文字通り読むと賃金全額払いの原則に違反するかに見えますが、勤務に対する評価を蓄積して、退職時に具体的な請求権が発生するものであることから、全は、減額または不支給とすることができる旨が退職金規程に定められています。同業他社への就職や秘密情報の持ち出しを禁止しているにもかかわらず、退職後に同業他社へ情報を持ち出した人物がおり、退職金を不支給にしたいのですが、可能でしょうか。退職金を減額または不支給とするには、過去の功労報賞を著しく抹消するほど重大な違反が必要と考えられています。職業選択の自由の観点から競業避止義務が限定的に解釈することをふまえてもなお、違反の程度が悪質な場合には、大幅に減額することであれば可能な場合はあります。A&A2025.250弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永 勲 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。第80回 退職金減額・不支給、中途採用と信用調査理解は重要ですすす方今後も後もも労知っておきたいQ労働法

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