採用時に行う「信用調査」は、不適切なのでしょうか信用調査とはQ2避止義務に違反していること、業績退職金に占める原告が貢献した割合も低いことなどを考慮すれば、原告の競業避止義務違反は、原告の勤続の功を大きく減殺する、著しく信義に反する行為」に該当するものとして、退職金額を4分の1にまで減額したことは相当であると判断されました。3現代では、70歳までの就労機会の確保が努力義務とされており、65歳定年制も増えていくことが見込まれますが、65歳を超えても働き続けることも想定されています。しかしながら、定年による退職後であっても、競業避止義務を負担することになります。定年まで勤めた労働者にとっては、同社でつちかったスキルを活かして、新たな仕事を始めることは想定されるところですが、会社の承諾なく行ってしまうと、退職金の減額や不支給といった影響につながるおそれがあります。せっかく貢献してきた企業にとって勤続の功を抹消ないし減殺してしまうことは、望んでいないでしょうから、競業行為になりそうな場合には、会社の事前承諾を得るなど、退職金の取扱いが紛争化しないように留意していただくことが望ましいものと考えます。意なく行ってもよいのでしょうか。2個人情報保護法は、個人情報の取得に関して、利用目的をできるかぎり特定し(同法第の手段によって個人情報を取得してはならない(同法第20条)とされています。適正な取得と認められるためには、利用目的をあらかじめ公表しておくか、速やかに本人へ通知することが求められています(同法第21条第1項)。さらに本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないように、その取扱いに特に配慮を要するものは、「要配慮個人情報」とされており、同法の除外事由がないこれらの行為は、調査対象となる本人の同1採用の場面における信用調査には、過去の職歴や具体的な業務内容などを過去の在籍企業に問い合わせることによって、採否を決定するための情報として活用する目的があります。外資系企業においては、「リファレンスチェック」などと呼ばれており、信用調査を行うことが一般的になっていますが、日本の企業では必ずしもこのような調査が行われているわけではありません。情報収集の方法としては、前職の企業に対して、経歴や実績、職務経験、在籍期間、懲戒処分の有無や勤怠状況などを質問する書面を送付したり、面談を申し入れたりすることで行われます。退職金減額または不支給の留意事項個人情報保護法による規制当社では中途採用の際、内定を出す前に、外部の民間業者に委託して信用調査を行うこととしています。社内から「採用前に信用調査を行うことはプライバシー侵害になるのでやめた方がよいのではないか」との意見が出ているのですが、信用調査を行うことは不適切なのでしょうか。信用調査を行うにあたっては、本人の同意を得て行うべきでしょう。なお、本人の同意を得た場合であっても、社会的差別の原因となるおそれのある情報のように収集自体が禁止されている情報があることにも留意しなければなりません。2025.25217条)、取得にあたっては、偽りその他不正A
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