かぎり、本人の同意なく取得することが禁止されています(同法第20条第2項)。信用調査においては、受託した調査会社に対して調査対象となる前職の企業が提供する行為は、個人情報の第三者提供に該当することになります。したがって、個人情報保護法を順守する企業であれば、本人の同意がないかぎり、信用調査に対する回答は行わないということになるでしょう。情報のなかに要配慮個人情報が入っていれば、なおさら同意なく提供することは許されません。仮に、本人の同意なく情報を得られたということであれば、信用調査を行うことで、前職の企業における個人情報保護法違反を引き起こしてしまっていることになります。調査を依頼した企業としても、個人情報は適正に取得しなければならず、個人情報保護法違反を犯して取得された情報を得ることは避ける必要があります。なお、個人情報保護法以外に職業安定法でも、労働者の募集を行う者は、労働者の個人情報を収集し、保管し、または使用する際に、その業務の目的の達成に必要な範囲内で取り扱うことが求められており(職業安定法第5条の5)、同法について厚生労働省が定める指針においても、事業者が応募者の適性・能力とは関係のない事項で採否を決定しないようにするために、①人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因集することはプライバシー権の侵害になる可能性が否定できません。4信用調査について外部へ委託する場合もあるかと思われますが、その場合でも、本人の同意を得て開始することを前提とする必要があり、委託先が本人の同意を得ることなく取得した情報を採否の決定に利用することは不適切な個人情報の利用となりかねません。者について実施することとし、同意が得られない場合には前職の企業への質問や面談などを通じて、対象者の情報を収集してはならないと考えられます。ることを継続することを希望されるのであれば、対象者からの同意を確実に獲得しつつ、進めることが適切でしょう。となるおそれのある事項、②思想および信条、③労働組合への加入状況などの情報収集について、業務目的の達成に必要不可欠であり、収集目的を示して本人の同意を得ないかぎり、禁止しています。したがって、これらの情報については、同意があったとしても、取得することが規制されています。そのため、信用調査を行うとしても取得すべき内容にも限定が必要となります。3個人情報の観点だけでなく、プライバシー権との関係も問題となります。プライバシー権とは、「私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利」(「宴のあと」事件 東京地裁昭和39年9月28日判決)と解されており、非公開の情報で、一般人の感覚を基準として公開によって心理的な負担、不安を覚えるような事柄であれば、法的な保護に値するものと考えられています。厚生労働省が収集することを禁じている情報は、プライバシー権がおよぶ可能性が高いものといえますが、それ以外にも私生活上の情報や人間関係についても知られたくない内容も含む可能性があります。プライバシー権についても本人の同意を得て収集する場合には、違法と評価されるには至らないと考えられますが、同意を得ずに収信用調査については、同意を得られた対象信用調査の結果を採用活動において活用すプライバシー侵害との関係信用調査における留意点エルダー53知っておきたい労働法AA&&Q
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