鎖や天然石などを組み合わせた作品もみ上げられた帯締めもあるが、手組みならではのよさがあるという。「帯締めは引っ張ったときに伸びないと着崩れしてしまいます。手組みの場合、糸を引っ張るのに使う重りを変えたり、手の力加減によって締め具合を調整することができます。そのため、あらかじめお客さまの要望をしっかり聞いてつくるようにしています」佐々木さんは帯締めだけでなく、組紐の技術を活かしてアクセサリーや小物も制作している。「展示会で帯締めだけ並べていても、着物を着ない人には見向きもされません(笑)。お客さまの目に留まるように、毎年一つか二つは新しいものをつくって展示するようにしています」組紐は、さまざまな色の糸を用いたり、糸を組む順番を変えたり、糸の本数を増減させたりすることで、多彩な製品をつくることができる。作業の様子を見ると、組み上げる際の手の動きは複雑だが、「この順番で組めばこう組み上がる」というイメージが頭の中にあり、スムーズに手が動いていく。「左手と右手では力が違いますから、気をつけないと強い方に引っ張られて、ねじれた仕上がりになってしまいます。ですから、つねに同じ力加減で組み上げるように意識しています」「組紐」といわれるだけに細いものしかつくれないと思いきや、佐々木さんはブックカバーやネクタイなど、幅の広い作品も手がけている。さらに、正絹と鎖やビーズ、天然石などを一緒に組み上げることで、ネックレスなど独自の作品も創作してきた。佐々木さんの作品を見た人から、「こんなものはつくれませんか」と注文を受けることも多いそうだ。「例えば、古い軍刀の紐の復元2025.262組紐を組むための「高台」。糸の束を交互に組み上げ、ヘラを使って整える。糸の本数を増やすことで、幅の広い組紐をつくることもできる「仕立てをしていたころ『人が1枚つくるとき、あなたは2枚つくりなさい』と母によくいわれました。その教えが技能の習得に役立ちました」
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