エルダー2025年2月号
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組紐をつくる楽しさを子どもたちに伝えるを頼まれたこともあります。図面が残っていないので、古くなった組紐をほどかせてもらって、それを見て図面を起こしてつくりました。オーダーメイドは神経を使いますが、自分では絶対につくらないものをつくらせてもらえるところが楽しいですね」幼いころからものづくりが好きで、「手に職をつけた方がよい」という母親の言葉にしたがい、洋服の仕立て職人として働いてきた。しかし、病気で仕事ができなくなり、自宅で療養していたところ、偶然、組紐のチラシが目に留まり「やりたい」と思い立った。30代後半から組紐の先生のもとへ5年間通い、技術の基本を習得した。「仕立ての仕事をしていたころ、母から『人が1枚つくるとき、あなたは2枚つくりなさい』とよくいわれました。組紐を習い始めたころは、何がわからないのかもわからない状態でした。そこで、できたものを持ち帰って、ほどいて一からやり直すようにしたところ、『こういうときはどうすればよいのだろう』 と疑問がわき、先生に質問ができるようになりました。このとき、母のいっていた言葉の意味がよくわかりました」組紐をつくるかたわら、展示会に出品したり、見学に来た地元の子どもたちに教える機会も多い。「子どもたちには組紐や道具を触らせたり、つくらせてみたりして、興味を持ってもらえるように心がけています」今後も「自分がつくりたいもの、ほかの人があまりつくらないようなものをずっとつくり続けたい」と話す佐々木さん。創作意欲は尽きることがなさそうだ。https://www.kumhmonet.ii 組紐工房葵杏TEL□03(6321)3809(撮影・福田栄夫/取材・増田忠英)エルダーむずかしい図柄の注文を受けた際は、図面に起こしてから制作する。写真はコブシの花の図柄を書き起こしたもの組紐でできたネックレス。左はピンクパール、右は翡翠との組み合わせ。ねじれないように均一の力加減で組み上げる佐々木さんの母親の婚礼衣装を加工してつくった暖簾。組紐の菊結びが飾りとしてアクセントになっている組紐でつくった3種類のひな人形。上の作品は、幅の広い組紐を折り紙のように折ってひな人形を表現している何十本もの糸を交互に組み上げることで、組紐ならではの美しい模様ができあがる。糸を引っ張る重りの重さや、ヘラを使って叩く際の力加減などで組紐の伸び具合が変わってくる組紐の定番、帯締め。左の2本は丸く組まれた「丸組」、右は平らに組まれた「平組」。オーダーメイドでは、デザインはもちろん、長さや伸び具合まで要望を細かく聞いたうえで制作するvol.34863

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