エルダー19特集生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜開催レポートⅡ〜制・名ざしで、研修に参加していただくのはむずかしいと思います。一方で、手をあげない方こそ、本当は出てほしいというところもあるので、主体的に参加する人をどのように増やすかという点が課題だといえます。荻野さんはいかがでしょうか。荻野 これまでも、55歳を迎える社員を対象に「キャリアライフプランセミナー」を実施してきました。ここでは、これからの資産形成の情報提供、これまでの自身のキャリアの棚卸から、これからのキャリアを考える機会を提供しています。参加者からは「もっと前に実施してほしかった」といった意見も多く寄せられています。小島 ライフプランセミナーは、今後ほかの世代に広げる予定はありますか。荻野 30代、40代、50代の10年刻みで実施したいと考えています。例えば30代であれば、次の40代のセミナーの際、30代でどんなことを考えていたかをふり返ることができる、そんな仕組みにしていきたいですね。小島 たしかにふり返りに使えるのはよいですね。例えばライフプランセミナーのようにお金のことを考える機会は非常に重要です。定年前に突然、資産運用をすすめるのは現実的ではないところもありますので、金融経済教育の支援リアデザイン研修について、こだわっているポイントや独自に工夫をされているところはありますか。戸井 キャリア形成支援のスタートは研修となっています。成人発達理論や意識体系(「アイデンティティ=自己認識」、「価値観」、「能力」、「行動」、「環境認識」の意識を体系化)を軸に、自身の長所をあらためて確認しながら、在りたい姿を描いていただき、在りたい姿とのギャップに対して、何をしていくかを、段階を踏んで3カ月間3回に分けて考えていただきます。各回事前課題にも取り組んでいただき進めていきます。小島 時間をとにかくかけて、ゆっくり腰をすえて考える機会を提供されているということですね。先ほど手あげ式の研修の話もありましたが、手をあげる方はわりと問題意識の強い方だと思います。そういった方を増やすためにどうされていますか。戸井 そこはむずかしいところです。キャリア自律となると、どこまで手をかけてよいのかというところがあります。ですから成長の場を提供し、あとは自身でどれだけ先を見すえるか、そのきっかけづくりとして、30代・40代の社員を対象としたキャリアデザイン研修も行っています。小島 たしかにキャリア自律といいながら、強は今後重要になってくると思っています。では、宮島さんに、企業が個人にキャリア自律をうながすために必要な視点についてお聞きしたいと思います。宮島 視点としては二つあると思います。まず一つは、やる気のある人から動かすこと。リスキリングは新しい概念ですから、やる気のある人からということです。例えば同期の人たちはみんな横並びだと思っている人がいます。ところが同じと思っていた同期が、じつはこの先のキャリアに対するしっかりした考えを持っていて、準備もしているという状況を知ってもらうことです。やる気のある人から動かしてそれを見せていくというのは一つの普及経路です。二つめは、会社からの期待感です。「がんばってくれよ」といわれて悪い気がする人はいません。役職を降りるのは仕方ないとしても、「君には次の役割がある、ぜひがんばってくれよ」といわれると、みなさん喜んで取り組めると思います。小島 まずは、やる気のある方を中心に動きをつくり、褒めて育てる、ということですね。宮島 そうですね、何歳になっても褒められたいものですし、特に出世をやりがいにしてきた人たちにとって、それが先になくなると、その時点でモチベーションが落ちてしまいます。自身で目的・目標を探すことは重要ですが、でき
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