エルダー2025年3月号
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2025.32株式会社九電工 人事労務部長下村晋二さんます。新卒採用も厳しいなかで、人材を確保していくためには、シニア層が活躍できる環境を整備していく必要があると考え、今回の改定に至りました。いまの60歳以上の人は、昔に比べてとても元気ですし、そうであればしっかりと働き、活躍してもらいたいという思いもありました。―新制度への改定にあたり、内部ではどんな議論があったのでしょうか。下村 55歳以上の社員にアンケート調査を実施したところ、「60歳以降もフルタイムで勤務したい」という人が約8割、65歳以降でも約4割いました。特に人員が不足している施工管理に従事する技術職として雇用継続を希望する人も相当数いました。一方で、同業他社と比べて現在の報酬が低いという課題も見えてきました。 議論は、定年を延長するか、継続雇用制度を続けるか、というところからスタートしました。経営会議にも諮り、「一律に定年を延長―貴社では、2025(令和7)年1月に定年後継続雇用制度を改定し、雇用の年齢上限を70歳に延長されました。その経緯やねらいについてお聞かせください。下村 当社では、2002(平成14)年から、60歳定年後の継続雇用制度を導入しています。ただし、賃金については在職老齢年金や高年齢雇用継続基本給付金などを考慮したもので、定年前と比較すると低い処遇となっていました。制度導入以降、2回ほど賃金の見直しを行っていますが、技術職のなかには定年後、他社に引き抜かれて転職する人がいたり、各部門や支店によって制度の解釈が異なり統一性に欠けるといった課題も生じていました。 今回の制度改定の一つの契機は、2020年に高年齢者雇用安定法が改正され、70歳までの就業確保が努力義務となったことです。現在、当社には60歳以上の社員が、全社員の6~7%にあたる約450人おり、10年後には約15%、1000人を超えると予測していするのではなく、継続雇用制度を改定したほうが、働く意欲を喚起できるのではないか」、また「若年層に配慮し、役職の世代交代の面でも有効」ということで、継続雇用制度の改定で対応することに決まりました。そして報酬制度を見直し、メリハリをつけたジョブ型に近い制度にすることにしたのです。―「ジョブ型に近い制度」というところも含め、新制度の概要について教えてください。下村 従来の継続雇用制度の場合、65歳以降については、特例的に一部の技術職に限定して働いてもらっていましたが、新制度では希望する人は原則全員が70歳まで働くことができます。また、60歳定年後の処遇制度については、定年前の役職や保有資格をポイント化し、その合計で報酬水準を決めていました。ただし、先ほどお話しした通り、部門や部署によっては報酬水準の特例運用が常態化するなど、運用面でばらつきがあり、担当する業務と報酬が紐づいていませんでした。 当社の事業は、九州電力から委託されている配電線工事、建物内の電灯・コンセントといった電気設備工事、エアコンや給排水衛生などの空調衛生の設備工事の三つの柱に加え将来を見すえて継続雇用制度を改定シニア層が活躍できる環境を整備

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