エルダー39慣などが複雑に関連し発症します。特に中年期以降になると、歯周病により歯肉が退縮し、露出した歯の根に生じるむし歯が増加します。この根面のむし歯は進行が早く、歯の土台である根が急速に侵されて、歯を失う原因となるため、早期に治療する必要があります(写真1)。また、歯の治療でつめたり、被せたりした修復物と歯の隙間に生じる二次むし歯も増加してきます。これは修復物が多くなり口腔清掃がむずかしくなることと、修復物と歯の隙間が歯に加わる温度差(口の中には熱いものや冷たい飲食物が入るため)や噛む力によって徐々に広がり、細菌が侵入することで生じます。二次むし歯は修復物で隠れた部分で進行するので、初期では見つけにくく、明らかに黒くなったり、欠けたりしたときにはかなり進行していることが多いので、定期的に歯科医院おり、これはむし歯に罹患したことがない者はほとんどいないことを示していますが、裏を返せば、治療すればずっと自分の歯を使っていけるということでもあります。中年期以降は家庭や職場、地域などにおける役割の増加によって生活習慣が不規則になりがちで、歯や口の健康へのリテラシー(健康や医療に関する情報を正しく入手し、理解して活用する能力)も低下する者が散見されるようになり、口の中の環境の悪化も相まってむし歯や歯周病が徐々に進行しやすくなります。中年期以降で歯を失うおもな原因である歯周病は、歯肉からの出血に始まり、歯が動揺するようになり、やがて噛んだときに痛みを生じるようになるなど重度化するまで症状が出にくいため歯科受診が遅れ、抜歯となってしまうケースも少なくありません。しかし、現在高校卒業後は歯科健診は義務づけられておらず、早期治療や定期健診などの受診行動は、個人の健康認識に委ねられているのが現状です。高齢期以降では、退職などにより生活環境に大きな変化が生じ、身体機能の低下や疾病の罹患によって、 歯や口の健康へのリテラシーがさらに低下し、職場近くの歯科医院で行っていた定期的な歯科受診も中断してしまう者も多くなってきて、さらに口の中の環境は悪化してくるため、むし歯や歯周病が急速に進行しやすくなります。歯周病と関連する生活習慣病には糖尿病や高血圧症などがあります。生活習慣病とは、食事や運動の習慣、喫煙・飲酒・睡眠といったさまざまな日々の習慣が発症や進行に関与する疾患群です。中年期以降ではこれら生活習慣は悪化しやすく、生活習慣病も発症・重度化する可能性が高くなり、それにともない歯周病も急速に悪化します。特に糖尿病は歯周病と関連が深く、糖尿病を有する歯周病患者に対する歯周病の治療は糖尿病の重症度の指標の一つであるHbA1cの改善に有効であることが明らかになっています。中年期以降では毎日の口腔清掃の不良、食事をあまり噛まずに飲み込む、喫煙、過度の飲酒等の生活習慣の悪影響が大きいことから、これら生活習慣を改善することで、糖尿病、歯周病ともによい効果が得られることが多くあります。加齢と歯加齢と歯··口腔の病気口腔の病気2(1)むし歯むし歯は口の中の細菌により歯が溶かされる感染症です。むし歯は口の中の細菌と、食事による糖分や粘着性の食品の摂取とその頻度、歯の質、歯並び、唾液の量や質、健康状態、生活習※写真提供:北海道大学大学院歯学研究院口腔健康科学分野高齢者歯科学教室写真1 根面のむし歯身体機能身体機能のの変化変化安全・健康対策安全・健康対策とと加齢 による
元のページ ../index.html#41