2025.340いくことが重要です。(3)歯の破折と咬こう耗もう、摩耗高齢期になると噛む力などによって、歯が破折することが多くなってきます。特に神経を抜いた歯や、被せ物や詰め物など歯の治療を受けた歯は脆く、破折しやすい状態になっています。これは、歯の欠損や移動によって特定の歯だけに噛む力が加わったり、歯はだんだんと摩耗していきますが、金属の詰め物はあまり摩耗しないため、強い力がかかりやすくなるからです(写真2)。また、加齢により歯は酸蝕、咬耗、摩耗などによって知覚過敏や噛む能力の障害、審美障害が生じることがあります。酸蝕は歯が酸によって化学的に溶解されること、咬耗は歯と歯の接触によりすり減ること、摩耗は歯以外の物理的な力によりすり減ることです。これらは酸性の強い食品の摂取や胃食道逆流症、歯ぎしり、不適切な口腔清掃、習癖などによって生じます。歯がしみる、噛むと痛む、歯が変色してきたなどがあれば、歯科医師に相談しましょう。(4)口の機能低下口には食べる、話す、感情を表す、呼吸するなど多くの機能があり、これら機能は生活に欠くことのできない機能です。これら機能には歯や歯の周りの組織、顎の骨や関節、唾液腺、口の内外の筋肉、舌などの多くの組織、神経が協調して働く必要があります。生活環境の変化や、加齢による身体と精神(心)の生理的および病的変化によりこれらは老化し、口の機能は低下します。歯を失うと食べ物を細かく砕き、すり潰す能力が大きく低下します。食べ物を細かく刻んだり、すり潰したりすればよいと思われるかもしれませんが、噛んだときの食感や風味などを感じることができなくなり、食事の楽しみが損なわれます。また味覚も低下します。味覚は食物が砕かれ、すり潰されるときに食物から溶けだした味物質が唾液と混ざり合い、舌などの表面にある味のセンサーに触れることで感じます。細かく刻んだり、すり潰したりすることで、センサーに触れる味物質のバリエーションは少なくなり(砕き、すり潰す過程での、味の変化を知覚できないなど)、短い時間しか味を感じるでチェックしてもらい、早期に発見し治療しないと歯を失う可能性が高くなります。(2)歯周病歯周病は口の中の細菌により歯肉炎が生じ、歯を支える骨が溶かされる感染症です。加齢とともに、歯の周囲に歯周ポケットが形成され、その中で歯周病原菌が増殖することで歯肉炎が生じます。重症化すると歯肉から出血するようになり、歯を支える骨が高度に溶かされると歯の動揺が生じ、噛むと痛みが生じるようになります。歯周病の直接的原因は歯周病原菌ですが、歯並びの悪さや歯ぎしり、喫煙、服薬内容、生活習慣病などの全身疾患がその発症や重症化に関連しています。歯周病の予防には、歯周ポケット内の歯周病原菌を毎日の口腔清掃と定期的な歯科治療で除去することが重要です。歯科医院でほかの関連因子の影響を少なくする生活習慣に関する指導を受け、改善することも重要です。特に中年期以降では、歯並びの悪化や歯肉の退縮、治療済みの歯の増加など、口の中は複雑になり、口腔清掃は困難になります。そのため、毎日の口腔清掃で使用する歯ブラシ以外の歯間ブラシやデンタルフロス(糸ようじ)などの補助的清掃用具や歯磨き粉、含がん嗽そう剤ざいなどを歯科医師、歯科衛生士の評価と指導のもと個人個人で最適化して※写真提供:北海道大学大学院歯学研究院口腔健康科学分野高齢者歯科学教室写真2 咬耗咬耗した歯咬耗した歯
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