レポート作成を命じて提出させていました。結局、レポートの内容は根本的な問題点に関する考察に不足があるものでしたが、対象者からは「これ以上は教えてもらわなければわからない」などと話がされ、具体的な訂正指示をしましたが、簡潔なレポートが提出されるに留まったため、最終的に解雇に至りました。なお、入社から解雇に至るまでは、約1年間が経過していました。ポイントをまとめると、①違反事由に該当する行為が記録化され、注意した旨が残されていたこと、②支店へ異動させて環境を変えて改善の機会を再度与えていること、③警告書や指示事項を文書化するなどの方法で、改善点の特定および明確化を複数回図っていること、④労働者の自己認識を把握するためにレポートを作成させていること、などがあげられます。通常の中途採用であれば、この程度の要素が集約されなければ解雇に至らないということになりますが、即戦力として期待された人材の場合には、②の改善の機会を複数回与えるという点は必要性が低く、③および④の改善点の把握についても自己分析させることで足りるものと思われます。試用期間という短期間をもって解雇することはむずかしいことが多いのですが、試用期間を延長したうえで、延長時に十分な警告を行っておくことで、業務の改善または労働契約の終了に向けた準備が整うことも多いのではないかと思われます。高齢者の勤務と事故の発生状況12024(令和6)年9月時点において、総務省がまとめた人口推計は、65歳以上の高齢者が3625万人で過去最多となり、総人口に占める高齢者の割合も29・3%に及び過去最高です。また、2023年の労働力調査においては、60歳以上の高齢者の数が914万人と過去最高を更新していたこともふまえると、高齢者全体の増加とともに、労働を継続している高齢者も増加傾向にあるといえるでしょう。他方で、厚生労働省が公表した、仕事中の事故で死亡や4日以上休むけがをした60歳以上の労働者は、3万9702人となっており、非常に多くの労災事故が生じています。労災事故に占める高齢者の割合も29・3%となっています※。60歳以上の労働者が増えているとしても、全労働力人口に占める割合は18・7%※であることから、高齢者が労災事故に遭うリスクが高いということはこれらの調査などからも読み取ることができると思われます。30代の労働者と比較すると男性は約2倍、女性は約4倍の労働災害発生率となっており、休業見込み期間も年齢が上がるとともに長期化する傾向があるとも指摘されています。したがって、高齢の労働者が増加傾向にあるうえ、事故の発生率も高く、事故が発生し65歳以上の高齢者の割合は過去最高の状況となっており、働く高齢者の数も過去最高を更新しています。他方で、仕事中の事故で死亡や4日以上休むけがをした60歳以上の労働者数も過去最多となっており、高齢者向けの安全配慮義務を整備しておく必要性が高まっています。A高齢労働者が増えてきているので、高齢労働者の労働災害防止対策について知りたい世代別の労働力人口においても高齢化が進んでおり、自社内でも高齢の労働者が増えているのですが、事故などの防止対策についてこれまでと変えていく必要はあるのでしょうか。Q2※ 厚生労働省「令和5年 高年齢労働者の労働災害発生状況」 https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001099505.pdf2025.344
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