たときのけがの程度も大きくなるということをふまえて、職場の安全配慮義務に対する見直しなどに取り組む必要があると考えられます。エイジフレンドリーガイドライン2厚生労働省は、令和2年3月16日付で「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(通称「エイジフレンドリーガイドライン」)を策定しています。エイジフレンドリーガイドラインが策定された当時も、高齢者雇用の増加と事故発生率の高さ、けがなどの長期化の傾向は、昨年の調査などと比較しても大きな相違はありません。つまりは、エイジフレンドリーガイドラインが定められたものの、これを意識した安全配慮義務や具体的な対策が広がっておらず、高齢者が安心かつ健康に働ける職場づくりが実現できていない環境が残っていることを意味しているように思われます。エイジフレンドリーガイドラインを策定するのみならず、中小企業事業者向けにエイジフレンドリー補助金も用意されており、高齢者の事故対策に要する費用を補助する制度もあります。こちらは、令和6年度は、予算が不足するほどの状況になり、申請の締切が早まるといった状況になっており、関心が強まってきていることはたしかなように思われます。あらためて、高齢者向けに安全な職場づくりに目を向けて取り組む必要性が高まっていることを認識していただければと思います。具体的な留意事項3高齢者の労災事故のうち、特に注意が必要と考えられているのは、「墜落・転倒」、「動作の反動・無理な動作」などです。これらの類型では、高齢化するにつれて、労働災害発生率が高くなる傾向にあるうえ、特に転倒による骨折などの発生率は顕著に上昇します。単純な対策のように思われるかもしれませんが、まずは、転ばない職場、段差のない職場、明るい職場を目ざすということは重要な要素になります。床に置かれているものを整理整頓すること、つまずきの原因になるような場所には目立つような色を付けること、注意をうながすマークなどを記すことなどが考えられるところです。昨年度のエイジフレンドリー補助金にも「転倒・墜落災害防止対策」が対象にされており、つまずき防止対策、滑り防止対策、階段への手すりの設置などが補助対象となる防止対策としてあげられていたところです。転倒防止については、転ばない職場づくりはもちろんですが、じつは何もないところで転倒するという例も少なくありません。そうなると、どんな対策をしても無駄なのかというとそういうわけではなく、転倒やけがをしにくい身体づくりの運動プログラムの導入などが推奨されています。このことは、腰痛を引き起こすといわれる「動作の反動・無理な動作」に対する対処にもなります。昨年度のエイジフレンドリー補助金においても、「転倒防止や腰痛防止のためのスポーツ・運動指導コース」が用意されているように、運動プログラムを導入することはけがの防止や予防に役立つと考えられています。高齢者のための職場づくりは将来にわたって安心・安全に働ける職場づくりにつながり、定着率の上昇にも寄与するものと思われますので、一度、高齢者の労災事故防止に目を向けた取組みを行ってみてはいかがでしょうか。エルダー45知っておきたい労働法A&Q
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