株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之人事用語辞典■■■■■■■■いまさら聞けない 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。2025.348第55回今回は、リストラクチャリングについて取り上げます。広義と狭義の意味があるリストラクチャリングよりも、“リストラ”という略称の方がすっかり定着していますが、リストラというと多くの人がまずイメージするのが人員削減や解雇といった意味だと思います。こちらの意味でも間違ってはいませんが、じつはこれだけでは狭い部分をさしています。リストラクチャリングは、もともと英語で再構築を意味するRestructuringからきた用語です。定義としては経済財政白書にある平成11(1999)年度年次経済報告のなかで「リストラの背景と実態」に記載されている内容がわかりやすく、「企業が、資本、労働、技術など各種の生産要素の組合せや業務内容を見直して、再編成することを意味している。すなわち、諸資源のより効率的な組合せを作り生産性を上昇させていくという行為を指すものである。この意味では、必ずしも業務規模の縮小や撤退、あるいは雇用削減を意味するものではない。」としています。ここでみられるように、本来のリストラクチャリングには、不採算や収益性が高くない事業から、資源(ヒト・モノ・カネ・情報等)を成長分野にシフトしていくという広義の意味が含まれています。人員の削減はこれを行ううえでの人員数の適正化にともなうもので、一つの手段という狭義の意味になります。この用語がいつから使われ始めたかは明確ではないのですが、1980年代には多くのアメリカ企業がリストラクチャリングに取り組んでおり、そのころ日本でも用語としては流入していたようです。1990年代になると、いわゆるバブル経済の崩壊による急速な企業業績の悪化への対応策として、本来の目ざすべき生産性の向上や成長分野へのシフトよりも、会社規模の縮小と人員数の適正化を行う企業が多かったことから、リストラ=人員削減のイメージが一気に広まっていきました。広義のリストラクチャリングが増えてきたバブル経済以降も、2008年前後のリーマンショックや2020(令和2)年あたりからの新型コロナウイルス感染症の流行など、国内景気が悪化すると、その喫緊の対応策として狭義のリストラ(人員削減)という選択肢を取る企業はまだ多くあります。このことは、東京商工リサーチが集計している上場企業の早期・希望退職募集数※1の2009年から2024年ま「リストラクチャリング」※1 「早期退職・希望退職」については、本連載第26回(2022年7月号)参照。https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202207/#page=52
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