エルダー2025年3月号
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2025.356※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します鈴すず木き仁ひと志し・濱はま田だ麻ま里り 著/日本能率協会マネジメントセンター/2200円大おお久く保ぼ幸ゆき夫お 著/経団連出版/2750円アルムナイ雇用を超えたつながりが生み出す新たな価値マネジメントのリスキリングジョブ・アサインメント技法を習得し、他者を通じて業績を上げる働くことをめぐる環境が大きく変化して、マネジメントすることの難易度が格段に上がっているという。本書によると、マネジメントに自信を持っているマネジャーの割合は、4人に1人にすぎないそうだ。そこで、マネジメントスキルの再開発・再教育が企業にとって喫緊の課題になっていると本書の著者は綴り、「マネジメントスキルを習得し、マネジメントが楽しくできるようになれば、企業の生産性は大きく向上し、働く人々のワーク・エンゲージメントも高まる」とその重要性を表現している。本書は、マネジャーの役割は「他者を通じて業績を上げる」ことであり、日常のマネジメントの行動は「ジョブ・アサインメント(JA)」に集約されるという。そして、四つのプロセスと各八つの行動で構成される32のJAの解説を中核にすえて、マネジメントのポイントをテーマ別に整理し、JAの各項目とつないで詳しく、かつ読みやすい文章で説明している。マネジメントスキルを高めたいと願うマネジャーの自己啓発書としておすすめできるとともに、マネジメント研修のサブテキストとして、また、多面観察評価後の内省機会における思考の整理にも役立つ内容となっている。「アルムナイ(alumni)」は、英語で「卒業生」を意味するが、企業の「退職者」に対しても使われている。近年、急速に注目されるようになった。終身雇用制が長く定着してきた日本では、転職や独立のための「退職」や「退職者」に対してネガティブな印象を持ちがちだが、働き方の多様化が進み、職業人生が長くなってきた現在、転職や起業、学校に通い学び直すなど、退職を選ぶ理由も多様化し、退職者のなかには、辞めた会社とよい関係を築く人もいる。また、アルムナイとよい関係が築ける企業もあるという。本書は、アルムナイと企業の関係構築が注目されている理由をはじめ、アルムナイとよい関係を築くうえでの考え方や方法を解説。2人の著者が所属する会社では、アルムナイを貴重な人的資本ととらえる企業に対して、自社のアルムナイと関係を構築するための支援を行っており、本書ではよい関係性を築いたことで得られている双方にとっての価値などの事例も紹介している。また、ミドル・シニア人材の再躍進に向けたプログラムに、アルムナイがかかわるといった取組みも始まっているという。アルムナイとの関係づくりなどを考えている企業の担当者らにおすすめしたい一冊である。退職した個人と企業がその後良好な関係性を築き、双方が価値を得るには?現代の企業環境に適したマネジャーのスキル向上・能力の再開発に役立つテキスト

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