エルダー2025年4月号
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2025.48仕事ができる30・40代が辞めていってしまいます。会社内に好循環をつくるためにも、中高年社員に成長してもらうことが必要です。50・60代社員が活き活きとして成長していることを見せることができれば、離職率が下がるなどの組織側のメリットにもつながるはずです。「リスキリング」の前に「リスキリング」の前に「リ・デザイン」を「リ・デザイン」を3―中高年社員の“学び直し”はどのように進めていけばよいのか、具体的に必要なプロセスなどについて教えてください。廣川 「リスキリング」の前に、「リ・デザイン」が必要になると、私は考えています。リスキリングというのは、まさに「スキル」なので、技術論であり、何か目標を達成するための方法でしかありません。だからリスキリングの前には、何を大事にして、何に時間を費やして、どんな人生を過ごしたいのかという、人生のグランドデザインを立てること、つまり「リ・デザイン」が必要となるのです。人生100年時代を迎えたいま、会社を辞めたあとにも長い時間があるわけで、そこを幸せな時間にするにはどうしたらよいか。いわゆる「ウェルビーイング(Well-being)」の観点かポジションにいると、若い世代のアイデアなどを潰してしまうことになりかねません。中高年社員の幹部や管理職の人たちに、変化対応能力を身につけてもらい、若手の提案に対して「おもしろそうだな」、「それをやってみよう」となるような風土にする必要があります。昨今重要性が指摘されている「職場の心理的安全性」なども、こうした風土から育まれるものだと思います。「学び直し」、「リスキリング」とはそもそも、政府が旗振り役となって推し進めている側面がありますが、「やらされ感」ではなく、もっと自発的に、「やらないとどうなるか」、「やることによるメリット」のイメージを描き、具体的な目的を示しながら、進めていくべきだと考えます。中高年社員が学び直しをしてくれて、60代以降も一人ひとりの社員が活き活きと働いていれば、それが企業にとっても大きなメリットになるはずです。「50代社員は元気がない」、「やる気がない」、「60代社員を手本にはしたくない」といった具合に、むしろ反面教師のような存在ばかりだとすれば、影響は30・40代の下の世代におよびます。「夢を持てない」、「ああはなりたくない」、「この会社にいるとあんなふうになってしまう」、「だったら転職しよう」となり、員には、一度アンラーニングを行い、学び直してほしいということがあるのだと思います。もちろん、古いものがすべてダメで、新しいものに入れ替えなければならないということではありません。アンラーニングをしてみることで、昔から大事にしてきたものの価値を再発見できることもあります。例えば、オンライン化が進んだからこそ、直接対話の重要性があらためて確認されたケースもあるでしょう。そうしたことを含め、“学び直し”は重要なのです。中高年社員の成長が中高年社員の成長が企業にもたらすメリット企業にもたらすメリット2―多くの企業が、社員の“学び直し”を支援する取組みを展開していますが、中高年社員向け研修などの優先度は、若い世代などと比べ、高いとはいえないのが実情だと思います。企業にとって、雇用する中高年社員の“学び直し”を支援することには、どんな意義があるのでしょうか。廣川 それをしなければ、「企業は生き残れない」ということだと思います。仮に、会社の中が学び直しをしない社員ばかりになってしまった場合、先ほど説明したような中高年社員の弊害が発生します。自身の経験のみで仕事をしようとする中高年社員が、会社の中でそれなりの

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