エルダー2025年4月号
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エルダー9特集高齢社員の「学び直し」を考える方に沿い、未来を描いてもらう作業です。研修では、四つのLに基づき、八つのゾーンに分けた「人生のリ・デザインplanningシート」に、現状について記し、そこから未来のビジョンを描くという方法で行っています。これまでの人生をふり返り、人生そのものをリ・デザインし、人生のグランドデザインを立て直すという一連のプロセスを経て、そこでようやく出てくるのがリスキリングの話です。新たなグランドデザイン、新たな自分の生き方や働き方に向けて、何が必要かを逆算して戦略を立て、その戦略に則って行うのがリスキリングだと考えています。目ざすものから逆算し、なぜ学ぶのか、なぜそのスキルを身につけることが必要なのか。そこを具体的に考えられるようになって、初めて納得感を持ってリスキリングに取り組むことができるのです。行動変容にはグループワークが有用行動変容にはグループワークが有用「危機感」を伝えることも「危機感」を伝えることも4―中高年社員が人生をリ・デザインし、効果的なリスキリングを実践できるようにするため、企業にはどのような取組みが求められるのでしょうか。廣川 リ・デザインには、やはり研修が必要でらも大きく視野を広げ、人生全体を見つめ直すことが求められます。「いま、自分に何ができるのか」、「社会とのつながりがどう得られるか」という観点に立ち、キャリアと人生のデザインを見直すのもポイントです。私が研修などで実施している「リ・デザイン」のプロセスを紹介すると、まず、「私のライフラインチャート」というものを作成し、これまでの人生を過去から現在までの時間軸に沿って棚卸しします。印象に残っている出来事や困難を感じた出来事、あるいは人との出会いなど、人生の各々の場面を、そのときの心理状態を思い起こしながら書き出して整理し、自身のルーツや歴史を紐解いていくのです。さらに、それぞれの「危機・転機」についてまとめた表も作成してもらいます。これまでに経験した転機に焦点をあててふり返り、今後につなげていく作業です。そのうえで、自身の今後の“未来”を見つめ、具体的な「リ・デザイン」に取り組みます。「統合的生涯設計」で知られるサニー・ハンセン氏の理論を応用したフレームワークを使っています。「Love(愛、家族、関係、絆)」、「Labor(労働、仕事)」、「Learning(学習、学び)」、「Leisure(余暇、自由時間)」の四つの“L”が統合されると、意味のある人生になるという考えす。個人での作業や宿題の形でワークシートを作成し、そこで気づくこともあるのですが、実際に作成されたほかの人のワークシートを見たり、意見交換をすることで効果的に行えます。例えば、参加型の研修で、これまで仕事一筋で高い役職に就いている人と、いわゆる出世コースを外れている人が同席するケースがありました。高い役職の人の方がワークシートをうまく埋められず、出世コースを外れている人の方が、しっかりと未来のビジョンを描けており、高い役職の人にとっては「自分の方が収入は高いが、隣の人の人生の方が充実して豊かそうだ」という気づきにつながることもあります。また、研修をしたままにせず、キャリアカウンセリングなどを随時行い、行動変容を確認することも大事です。キャリアカウンセリングは、プロのキャリアコンサルタントに依頼してもよいですし、社内にいるキャリアコンサルタントの資格を持った人が担当してもよいと思います。社内の人間の方が話しやすい人もいますし、社内では話したくないという人もいるので、どちらか選べるようにするとよいかもしれません。リスキリングにも、個人ではなく、仲間と一緒に行おうという流れもあります。リスキリングに「共同の」を意味する「co-」を加えた

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