2025.410職定年を迎える直前になって、「あなたはもうダメよ」と急に伝えるのではなく、その前の段階で、先行きの見通しなどについて情報開示を行い、「このままであと10年、会社にはいられると思いますか?」と、少し強い、ふみ込んだメッセージを出すべきです。そうすれば50代社員たちも、早い段階から危機感を持って、リ・デザイン、リスキリングに取り組むことができるでしょう。「会社から自分を取り戻す」「会社から自分を取り戻す」5―最後に、中高年社員のキャリア自律や活躍をうながす観点から、企業で働く中高年社員へのメッセージをお願いします。廣川 会社員としては、現在60代の人たちであれば、変化の大きな状況も、このままなんとか逃げ切れるかもしれません。しかし50代社員の場合、定年後の再雇用も考えれば、退職まで10年前後の期間があります。このまま自分が変わらずに、これまでのキャリアと経験で「10年もちますか?」と自らに問いかけることが必要だと思います。それぞれが少し厳しく、自分の会社内での評価や市場価値について、考えてみるべきです。そして、大切なのは「会社から自分を取り戻「コ・リスキリング」という名称も最近は聞かれます。要するに「一人で学ぶより、みんなと学ぶ方が収穫は大きい」ということですが、これが別のコミュニティに属する人と出会うきっかけになれば、さらなる効果も期待できるでしょう。また、中高年社員のリ・デザイン、リスキリングをめぐり、会社の重要な役割としてあげられるのが「情報開示」です。特にいまの50代社員は、時代に対応しきれていないにもかかわらず楽天的で、問題を棚上げにしている人が少なくないように感じています。現在55歳前後の社員は、バブル期入社世代で、就職活動で苦労をしていないケースも多く、会社との関係は、最初の出会いのところから「相思相愛」でした。求愛されて、選ばれて入社したというわけです。そのファーストインプレッションが強く、楽観的な状態が、ずっと続いているのかもしれません。危機感のない50代社員については、会社にも責任があります。役職定年や定年を控え、本音では、「もうそろそろあなたの役目は終わり」と思っていても、ギリギリまでがんばってほしいから、明確なメッセージや情報を伝えない。伝えていたとしても遠回しに、やんわりというだけで、伝わっていない可能性があります。会社側が当人のことを本当に考えるなら、役す」ことです。60歳以降は、これまでのように会社の敷いたレールに乗ってはいけなくなるのですから、会社という枠組みを外し、自分が今後どんな働き方をしたいか、どんな生き方をしたいのか、「会社を離れたときに残る自分」と向き合うことが重要です。ある人の例ですが、50歳ぐらいになったときに、親しい役員に「私は役員までいけますか?」とたずねたそうです。その役員の返答は「きみはちょっと無理だろうな」でした。その人はそこからすぐに、自分の人生の戦略を組み直し、持っていた資格に関する経験を積める部署への異動を申し入れ、さらに上位の資格を取得し、60歳以降は個人事業主として仕事をしていける道を開きました。会社に残るにしても、残らないにしても準備は必要でしょう。まずは、自分の人生のリ・デザイン。そこから逆算し、自分を変えるため、自分の価値を高めるために必要な目標を見定め、リスキリングに挑戦できれば、活き活きと未来に希望を持つ中高年社員が増えるのではないかと思います。〈プロフィール〉廣川 進(ひろかわ・すすむ)出版社に18年勤務後、大正大学臨床心理学科教員を経て2018年より法政大学キャリアデザイン学部教授。おもな著書に『キャリア・カウンセリングエッセンシャルズ400』(金剛出版)など。
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