エルダー2025年4月号
15/68

エルダー13特集高齢社員の「学び直し」を考える例えば、「突然同僚が辞めてしまい、引継ぎもないまま、自分で試行錯誤して仕事をなんとかこなし、きれいにマニュアル化して後任に引き継いだ」という仕事経験があれば、この仕事経験を通じて「マニュアル化」というスキルが得られたと考えます。しかし、ここでもっとフォーカスすべき強みは、「試行錯誤しながら新しい仕事を自分のものにした」というプロセスにある強みです。この試行錯誤のプロセスをより詳細に見ていくと、独自のプロセスが見えてくるはずです。この壁を乗り越えたプロセスを強みととらえ、今後のキャリアを考えると、可能性が広がっていきます。一方、強みを「〇〇分野での研究者としての専門性」や、「法人営業としてネットワークやスキル」ととらえてしまうと、基本的には過去からの延長線上にしかキャリアを描けなくなってしまいます。これでは学び直しのモチベーションも必要性も高まってきません。学び直しの時代では、学んできたことではなく、学びのプロセスに強みを見いださなければならないのです。②仕事のアサインメントとサポート次のポイントは、おもに上司が主体となって行う学び直し支援です。アサインメントは異動も含めて考えると人事部門も関係しますが、異われています。中高年社員の仕事や学びへの好奇心を活性化させていくには、自分のキャリアや将来像を大きくとらえるように支援し、新規性の高さや、自分が否定されるわけではないという理解が必要です。また、何か深く学んでいくには指標やライバルも必要になってくるということです。中高年社員の「戦略的学び直し」実現に向けた三つのポイント44これらの観点、また私の経験から、中高年の「戦略的学び直し」について三つの打ち手をお示しします(図表2〈14ページ〉)。①学び直しに向けたキャリアデザイン支援中高年社員本人の意識改革に向けて中核的な取組みになるのが、キャリアデザイン研修やキャリアコンサルタントによるカウンセリングです。ただし、これまでのモチベーション向上に向けたキャリア研修とは少し視点が変わってきます。特に、強みのとらえ方を変えていく必要があります。具体的には、保有している強みそのものではなく、その強みを形成・獲得していったプロセスに新たな強みを発見していくという方法です。つまり、学ぶ力そのものを強みとして認識するという意味です。動させるかどうかも含め、まずは上司が中高年社員にどう向き合うかということが重要になります。新たなアサインメントは、新たなスキルを身につけたあとに実施するべきと私自身も考えます。ただ、現在の中高年社員の多くが、OJTや仕事を通じて成長してきた世代ということも事実です。つまり中高年社員にとっては、実務を通じて学び直しができることが最も効果的で近道ということになるのです。いままでは、組織の事情と本人の強みからアサインメントを考えてきたと思います。特に中高年社員には次のステップという考えは薄く、なるべく得意な仕事をアサインしてきたのではないでしょうか。これを強みや価値観を活かしながらも、学び直しが必須のアサインメントを行っていくということが重要です。 ③自己像の拡大支援自己像の拡大支援とは、自分自身の可能性を広くとらえられるよう支援していくということです。例えば、いままで営業を長く担当してきた場合、40代、50代となると、「いまさら開発なんて無理だ」、「財務経理なんて無理だ」ととらえがちです。しかし自分自身の可能性を広くイメージできていれば、「営業でこれまで聞いてきたお客さ

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る