エルダー2025年4月号
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2025.418他方、モチベーションが低い若手に対し、講演で自発的な動機づけができないか期待している面もあるという。髙山産業は自治体から緊急災害対応の要請があると、経営陣以下、だれもが駆けつけることになっている。しかし、電話連絡に出ない者、あるいは「用事がある」と断る者もおり、災害対応をになう会社として若手社員の意欲の底上げは重要課題ととらえ、効果的な施策を探っている。コミュニケーションを重視したコミュニケーションを重視したモチベーション向上の取組みモチベーション向上の取組み社員全体のモチベーションアップの取組みの一つに社内表彰がある。年度末に社員総会を開催し、今期のふり返りと来期の目標を各部署が発表しており、その後に表彰式や懇親会を行っている。表彰式では「永年勤続表彰(15年以上対象)」、「モチベーションアップ表彰」、「スローガン表彰」の三つの部門を設けている。各部門で数人がノミネートされ、表彰式の壇上で受賞者が発表される。受賞者はベテランが多く、受賞のコメントが率直でおもしろいと評判だ。あるベテラン社員が受賞した際は、「社長がうるさくいってくるから見返すまで会社にいようと思っている」など、気兼ねなく話す生の声は、経営層にも、若手・中堅にも響く内容で、仕事は技術だけでなく、講演から得る学びによりマインドセットを変えて、生活行動や仕事によい変化をもたらしてほしいです」講師の人選は、社員のモチベーションが上がる、心に響く話が聞けることを中心に、幅広く考えている。例えば、現役から退いて間もない県内の元学校長を招いた際は、高齢社員の世代は仕事が忙しくて子どもの入学式、卒業式など学校行事に参加できない人もいたことから、教育関係者に現在の教育現場を語ってもらい、いまの時代は家族で子どもの教育を語る時代だと知ってもらう目的で人選した。講演後、特に高齢社員からは、「教育は奥さんに任せていたけれど、たいへんさがよくわかった」、「いまの学校のことがよくわかった」などの声があったという。ときには「社長、来年はこんな人がよいですね」と希望を出してくれる人もいる。そのほか、宮城県塩釜市で東日本大震災に被災し経験を風化させない活動をしている方、山口県有数の酒蔵の経営者、一般社団法人日本美腸協会の認定講師などに依頼してきた。社員たちは言葉で多くを語らないが、講演会を楽しみにしていること、講話を興味深く聞いたこと、視野が広がったこと、そんな様子が感じとれている。をするうえでの刺激にもなっているようだ。その後の懇親会を楽しみにしている社員も多く、社員同士の交流を深める場として提供するほか、同年代、同じ地域に住む人、異世代、異業種など、そのときそのとき、さまざまなくくりで開催し、エンゲージメントの向上につなげている。髙山社長は最後に「技術は日々の業務で自然と身につくものだと思っています。会社が社員に働きかけなければいけないことは、『心』です。技術力にプラスして気持ちがうまく乗れば、その技術力がグレードアップしていくと思っています。高齢社員には、学びから新しいものを取り入れつつ、これまでつちかった大事なものを活かしてほしいです」と語った。講演を通して社員の学びにつなげるなど、「社員の心に響く」人材育成に取り組んできた髙山産業。世間が人員不足などで景況感が芳しくないなか、堅調な黒字が続いており、取組みの成果と受けとめている。今後も、高齢社員と顔を合わせる直接のコミュニケーションを通して、よりよく改善するための施策を模索しながら、学びを積極的に取り入れ、企業全体の発展につなげていく。

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