エルダー2025年4月号
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2025.422としてどのようなサポートがあるのか、ということを考えてもらう機会を設けているのだ。このセミナーでは、子育てをしながら、あるいは自分の親の介護をしながら働くことを想定してもらうことで、まだ実感のない将来の自分を見通す力を養う。「自分自身のこともそうですが、ほかの世代の人たちがどういう困りごとや困難を抱えているのかということを、わがこととして理解する俯瞰的な目を持ってもらいたい、というのも、ねらいのひとつです」(吉田室長)ライフデザインという考え方を提示することで、若者やミドル世代に対しても、自分が高齢者になったときに、うろたえない考え方や、スキルアップの方法、自分自身のキャリアへの向き合い方を考えてもらっているという。「高齢社員に何を求めるか」ではなく「高齢社員に何を求めるか」ではなく組織が変化すべき時代組織が変化すべき時代同社における高齢者雇用の取組みは、高く評価されており、JEEDと厚生労働省が共催する令和5(2023)年度の高年齢者活躍企業コンテストで、厚生労働大臣表彰優秀賞を受賞している。しかし、吉田室長は「コンテストで優秀賞に選ばれたことはとても名誉なことですが、高齢職員のためだけに取り組んでいるとい高齢者ではないが40代の女性がこのイベントに参加して興味を持ち、半年間短期入職し、常勤雇用となった例があるという。「半年の間に自信をつけて、『これだったら続けられる』と2024年10月に常勤勤務とし雇用契約を結び、『今後は介護福祉士資格取得を目ざしたい』とがんばっています」(吉田室長)介護助手体験会がミドル層の採用に結びついた例ではあるが、吉田室長は「この職員が、これからも介護の仕事を続け、高齢職員になった際には、『20年、30年働ける仕事として、介護の仕事を選んでくれたんだ』といえる職場でありたいと思います。われわれの思い描いていたひとつのモデルケースです」と、介護助手による仕事の創出に手応えを感じている。生涯を見すえたキャリア形成のため生涯を見すえたキャリア形成のため「ライフデザインセミナー」を開催「ライフデザインセミナー」を開催また、職員の生涯を見すえたキャリア形成を支援するための取組みとして、若者世代をメインターゲットとした「ライフデザインセミナー」もその一環である。これから自分の人生をどうつくっていくのかについて、まだ実感を持てない若年層に対して結婚から妊娠、出産、子育て、介護と想定されるライフイベントに遭遇した際、社会的にどのようなサポートがあり、法人う意識はまったくありません」と強調する。同法人では、全職員が働きやすい環境づくりを目ざして、一歩一歩取り組んでいる。その取組みをある一面から見ると高齢職員の施策であり、別の一面から見ると障害のある職員への施策であり、同法人ではあくまでも「ダイバーシティ」というトータルな視点から、だれもが働きやすい環境を整えてきた。「いまは、昔の集団就職のように、均質な人材を確保することが困難な、いわばパッチワーク雇用が必要な時代です。高齢者や障害者、外国人など、それぞれに何らかの制約がある、しかし勤労意欲とポテンシャルの高い人財をどうやってマネジメントしていくかを考えることが大切です。お互いにサポートし合いながら、チームとしての成果をしっかりと上げていけるように、マネジメント層が間違いなく対応していく必要があります。『高齢職員に何を求めるか』ではなく、『組織側がどう変わっていけるか』を問われる時代なのだと思います」と、吉田室長は今後を見すえている。

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