エルダー2025年4月号
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エルダー23特集高齢社員の「学び直し」を考えるはじめに11日本の中高年のリスキリング(本稿では「学び直し」と同義とします)は惨さん憺たんたるものです。株式会社パーソル総合研究所の調査では、中高年で学び直しを行っている人は14・4%にとどまります※1。また厚生労働省の令和4年度「能力開発基本調査」によると、学び直しをしない理由は男女ともに、「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」(男性63・7%、女性48・9%)がトップです(図表1)※2。しかし、AIの急速な発達を見るまでもなく時代はよりいっそう先へ先へと動いています。現状に埋没していては次の時代の仕事にはありつけません。いまや「仕事ばかりしていると仕事さえできなくなってしまう」時代なのです。もちろん、これだけリスキリングが話題になっているいまですから、その言葉を知らない人はまずいないでしょうし、やらなくてよいと思っている人も少ないでしょう。しかし、大学を出て就職することで、「勉強なんかしなくてもよくなった!」と勘違いして20数年、何もしてこなかった中高年には勉強習慣が消滅している方が多いのです。新聞は読まない、読書もしない。そんな人がなんと多いことか。50歳以上では月に本を一冊も読まない人が56%という調査もあります※3。スマートフォンを握りしめてスマホゾンビになってしまっているのでしょう。こうしていわゆる“Knowing-Doing Gap(わかっちゃいるけど、実行できない)”を退治できずに、ズルズルと年を重ねてしまうわけです。※1 株式会社パーソル総合研究所「ミドル・シニアの学びと職業生活に関する定量調査」(2023年)※2 厚生労働省「令和4年度 能力開発基本調査」(2023年)※3 株式会社オトバンク「ミドル・シニア世代の読書習慣調査」(2023年)図表1 自己啓発を行う上での問題点の内訳(正社員のうち、性別)(複数回答)80(%)6040200仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない費用がかかりすぎるどのようなコースが自分の目指すキャリアに適切なのかわからない休暇取得・定時退社・早退・短時間勤務の選択等が会社の都合でできない家事・育児が忙しくて自己啓発の余裕がない自己啓発の結果が社内で評価されない自分の目指すべきキャリアがわからない適当な教育訓練機関が見つからないコース等の情報が得にくいコース受講や資格取得の効果が定かでないその他の問題男性女性63.763.737.537.517.117.117.417.415.715.714.914.913.813.814.014.013.113.112.212.210.910.98.78.75.75.75.25.248.948.930.330.321.321.326.526.520.720.720.120.126.726.729.729.7出典:厚生労働省令和4年度 「能力開発基本調査」(2023年)ミドル・シニアのリスキリングが進まない要因は?特別寄稿株式会社ライフシフト 会長・CEO 多摩大学大学院 名誉教授 徳とく岡おか晃こう一いち郎ろう

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