エルダー2025年4月号
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エルダー25特集高齢社員の「学び直し」を考えるためにリスキリングに挑戦しているのです。このように自分の未来の目的を考えてキャリアデザインやそのためのリスキリングをすることをキャリア自律といいます。他人任せ、会社任せ、会社の看板ではなく、自分の看板を創るわけです。「Will・Can・Must」という表現はよく聞かれます。やらなくてはならない(Must)に合わせて、自分の意志(Will)や能力(Can)を調整していくキャリアの考え方ですが、これさんは、自分のパフォーマンスを上げるという明確な目的を持っています。また、国内有数のメーカーの工場長を務めあげたMさん(50代後半)は定年が間近に迫るなかで、第二の人生の生き方を考えました。工場長時代に「もっとよい工場にするためには、デジタルの力を使って業務効率を高められるはず」という問題意識を持っていたのですが、デジタルスキルがなく手がつけられませんでした。そこで定年後は工場内での脇役にとどまらずに、現役時代の思いを叶えるべく同社のDX推進チームへ移籍を希望し、ゼロからアプリ開発を学び始めました。独学でアプリ開発スキルを身につけたMさんはいまでは、工場の事務工数削減に資するさまざまなアプリを独自に開発できるようになり、工場の若手から多くのDXの注文をこなすまでになっています。青銀共創と第二の人生のためのリスキリングという目的を持って臨んだわけです。KさんやMさんのような方々が、私の関係しているライフシフト大学や多摩大学大学院MBAで学んでいます。自分の第二の人生を組み立てる目的の50代の方々や、自社でのイノベーションに貢献するための力を身につける目的の40〜50代の方々など、みなさん自分の人生を考えるなかで、自分の生き方の目的を見いだし、そのは受け身です。会社の命令に自分を合わせ重宝がられます。しかし、自身の目的を持って生きることはできません。その代わりのコンセプトが「Will・ Can・Create」です。自分のやりたいこと(Will)と得意なこと(Can)を明確にして、未来を創造する(Create)のです(図表3)。受け身では学ぶ意欲は出ません。より主体的に生きると決めることでリスキリングの道が開かれるのです。目的を見いだすには自分の歴史を見つめることから44では、主体的に生きるためにはどのように目的を見いだせばよいのでしょうか。本稿では三つお示ししましょう。まず一つめは、歴史をふり返ることです。ライフシフト大学では「職務波乱万丈記」という自分の歴史の描写から始めます。図表4(26ページ)のイメージです。自分のキャリアの歴史をふり返るなかで、自分がやりたかったこと、かつて持っていた夢、自分のモチベーションが上がる理由を探っていきます。そこに自分の人生の目的を見いだせる可能性があります。二つめは未来ビジョンです。次の10年でいったい自分は何をしたいのだろうかとストレートに自分に向き合います。ライフシフト大学では「思いのピラミッド」というツー図表3 キャリア自律へ向けての発想の転換※ 筆者作成青銀共創型・若手がつねに会社の中心・年をとった人は脇役でいい・ベテランの出番が減る・余生という甘えも忍び寄る若者主役型WillWillWillWillCanCanMustMustCanCanCreateCreate・自分がいればこその価値を発揮・自分がいればこその価値を発揮・頼られる存在に・頼られる存在に・キャリアの最後を美しく・キャリアの最後を美しく・いつまでも夢がある・いつまでも夢がある

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