エルダー2025年4月号
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高齢者に聞くエルダー35のことで、つまり放課後の遊びの基地を提供しようというものです。区内小学校64校すべてにBOPがありますが、際立っているのは親が働いていない子どもにも一緒に遊べる場を開いていることです。子どもを区別しないという点では共鳴するものがあり、BOPの事務局長を5年間務めました。もう一つ、退職の年に立ち上げた「K小寺子屋」です。毎週土曜日に教員OB、保護者、地域の協力者とともに子どもたちの学力向上を願い16年間続け、後輩に引き継ぎました。現在も続いているのは画期的です。恩を受けた人に恩を返すということはなかなかできないものです。できることがあるとしたら受けた恩を次の世代につないでいくことだと思い、私は積極的に地域に入っていきました。田中さんは70歳で狛こま江え市シルバー人材センターの存在を知る。一緒に人権擁護委員をやっていた元校長仲間が教えてくれた。「楽しいわよ」の一言にひかれてセンターを訪ねた。「仕事を探すというより人気が高いダンスサークルにはまりました」と田中さんは屈託がない。ユニークな活動に魅せられて「ダンスサークルチャーミーズ」にひかれて狛江市シルバー人材センターに登録しました。事務局長を筆頭にみんなで楽しもうという雰囲気があり、自分に合った居場所を見つけたような気がしました。とにかくスタッフの方々の発想がユニークで、かつ地域への愛着がみなさんとても強いのです。教員時代は朝早く出かけ、夜遅く家に帰る生活でしたから地域に仲間がいませんでした。それが、ダンスサークルを通じて地域のみなさんと知り合ってから、地域に仲間がいることが生きがいにつながることを高齢になってから痛感しました。狛江市シルバー人材センターでは次々に新しい試みが生まれていますが、全国初といわれるのが、私のいまの職場である駄菓子屋「狛こまもん」の創業です。高齢化社会が急速に進むなか、会員に就業場所を提供するため、高齢者に負担の少ない「駄菓子屋」が2024(令和6)年9月につくられました。うれしいことに「駄菓子屋で働きませんか」と私に声をかけていただき、79歳での挑戦となります。かつての駄菓子屋はそこに集う子どもたちの賑やかな声があふれていた。子どもが握りしめて汗ばんだ硬貨を、手で数えるおばあちゃんの姿がそこにはあった。生涯現役で子どもの明日を見続けたい駄菓子屋という発想にまず驚かされました。駄菓子の販売という仕事は体に負担がかからないし、子どもたちやお母さんたちと楽しくおしゃべりできる地域のコミュニティの場にもなっています。もちろんまだ始まったばかりで、これからいろいろ課題も出てくるでしょうが、何よりも子どもたちが目を輝かせて買い物をする姿を見ているとうれしくなります。マスコミに取り上げられたことで、「私でも働けますか」とたずねてこられた私と同年代の方がおり、いまは楽しく一緒に働いています。勤務時間は月4回、1回2時間30分のシフトが組まれます。ほかの日には人材センターのいずみ支所で月7日か8日、1日3時間のシフト制で受付等事務の仕事をしています。駄菓子屋の販売員としては子どもたちにもお母さんたちの世代にも、とにかく笑顔で明るく接することを心がけています。駄菓子の世界も新商品が出てきますから商品の知識も磨かなくてはなりません。また、お金をいただくのですからミスのないようにしなければなりません。職場で日々鍛えられていると思っています。オフの時間もいろいろ趣味があるので忙しく過ごしています。現役で働き続けるためには健康管理が大切であり、3食をきちんと摂り、質のよい睡眠をとることを心がけています。健康に一番よいのは人と楽しく語り合うことかもしれません。明日は、どんな顔をして子どもたちがお店にやってくるでしょうか。豊かな未来を手渡すために、もう少しがんばってみようと思います。

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