2025.436はじめにはじめに1個人の移動に関しては、モビリティ(移動行動全般)に関する最近の動向から、Mマースaas※1やライドシェアの普及促進が叫ばれ、物流においては、インターネット通販の普及による宅配需要の増加というポジティブな側面が見られています。一方、労働力人口の減少や「2024年問題」に示されるような運転者不足、特に、バス、タクシー、トラックなどの職業運転者不足が深刻化しているというネガティブな側面も指摘されています。再就職などで運転業務にたずさわる方の年齢が高くなってきている傾向も見られます。自動車運転は、モビリティの維持においてもっとも利便性が高く普及した手段といえますが、日ごろ、何気なく行っている自動車運転を、必要な要素に分解していくと、日本では「認知」・「判断」・「操作」の過程と考えられています。また、欧米で多用されるのが、3段階モデルで、「運転方略(どこへどのような経路で行くのか、など)」、「運転操作過程(ある場面で実際にどのような運転行動を選択するか、など)」、そし※1 Maas……MobilityasaServiceの略。複数の公共交通機関やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせ、検索・予約・決裁などを一括で行うサービスて「実際の操作の実行(ペダルを踏む、ハンドルを切る、など)」から構成されています。運転は、さまざまな機能を総合した高度な行動といえます。その過程のいずれかに機能低下が生じる場合には自動車の運転が危険な状態になります。運転が禁止となる一定の病気運転が禁止となる一定の病気2その機能低下をもたらす要因として、疲労、疾患、服薬、加齢などがあげられます。道路交通法によって、一定の病気に関する運転禁止項目が規定されており、それらは、認知症、統合失調症、てんかん、再発性の失神、無自覚性の低血糖症、そううつ病、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害などとされています。そのほか運 高齢従業員が安心・安全に働ける職場環境を整備していくうえでは、加齢による身体機能の変化などによる労働災害の発生や健康上のリスクを無視することはできません。 そこで本連載では、加齢により身体機能がどう変化し、どんなリスクが生じるのか、 毎回テーマを定め、専門家に解説していただきます。第5回のテーマは「自動車の運転適性」です。身体機能身体機能のの変化変化安全・健康対策安全・健康対策とと福岡国際医療福祉大学福岡国際医療福祉大学医療学部言語聴覚学科医療学部言語聴覚学科 教授教授 堀堀ほりほり川川かわかわ 悦悦えつえつ夫夫おお自動車の運転適性第5回加齢 による
元のページ ../index.html#38