2025.438らの疾患の診断に至ると、症状や機能低下が進行していくこと、治療法が開発されていないことなどから運転は禁忌となります。脳卒中による認知症は、脳卒中発作によって発症の日時を確認できますが、ほかの認知症は、次第に機能低下が進行していくなかで、複数の認知機能低下と自立した生活が困難になることなどから診断されるため、発症の時点を詳細に確認することは困難です。例えば、アルツハイマー病は、脳内のタンパク質の一種が神経毒性を有する作用に変異することなどが原因と考えられ、その進行過程は、20年程度と考えられます。認知機能低下は各種の検査によって数量化されますが、認知症の進行による機能低下と、加齢にともなう機能低下の両面が考えられ、その峻別は専門的な知識・経験を有する医療関係者によって進められますので、受診が必要です。認知症の症状としては、時間や場所の認識(時間見当識、場所見当識)そしてワーキングメモリー、注意機能、空間知覚などの機能低下が見られますが、ほかに怒りっぽくなった、いままでできていたことができなくなった(例:ネクタイが結べない、食事の準備がうまくできなくなる、など)といったことがあげられます。特に運転に関しては、初めての道でもないのに道に迷う、制限速度よりかなり速い、あるいは逆にかなり遅く走行してしまう、周囲の車の走行速度が速いと感じる、悪天候や夜の運転を必要以上に避けようとする、などが指摘されています。また、運転機能低下の初期の段階では、最近、車の周囲を軽く擦ることが増えた、駐車区画に入れることがうまくできなくなってきた、交差点で緊張することが多くなってきた、などの行動変化が見られます。受診先としては、 まずかかりつけ医に相談することをおすすめします。さらに必要であれば、脳神経内科、精神神経科、リハビリテーション科のような診療科に紹介をしてもらい、より精密な検査を受け、早期の診断・治療を開始するということが求められます。日常的運転行動記録の重要性日常的運転行動記録の重要性5ドライブレコーダーの普及にともない、一般車両での利用に加え、企業においても“運転診断”などの機能を標榜した装置やサービスの利用が増えています。単なる交通事故の記録から保険会社の査定や裁判に備えるような“交通事故記録器”のような利用法ではなく、日常的運転行動を記録して、運転者の再教育に応用することが有用です。ど、勤務形態が大きく異なります。途中で仮眠をとってまた運転を続けるというようなことが職務の状態から必要になりますが、適切な休憩時間をとったとしても、睡眠時間の減少、生活リズムの変化、食事による栄養バランスの乱れ、そして運動不足、腰痛、肩こりなどが生じます。さらに、喫煙、飲酒習慣の良否などはいずれも心臓疾患や脳卒中の発症リスクを高める行動となります。職場のなかで交通事故を起こさないということはもとより、働いている仲間の健康維持にも深くかかわっています。慢性発症、特に変性疾患慢性発症、特に変性疾患4加齢にともない、人間の心身機能は変化してきますが、特に自動車運転にかかわる注意すべき変化としては「認知機能の低下」があります。認知機能は記憶、注意などの複合的な脳機能によるものですが、これが低下してくると、運転に影響をおよぼすことは容易に想像できます。そして認知機能低下と特に関連しているのが、認知症です。認知症にはアルツハイマー病、前頭側頭型認知症、びまん性レビー小体病などが該当し、さらに脳卒中による認知症が含まれて「4大認知症」といわれています。そしてこれ
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