エルダー2025年4月号
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エルダー39先行例では、当初、運転者から「見張られているようで嫌だ」というような反応が多く出ましたが、管理者や上司が叱責しながら危険運転を指摘するような運用ではなく、 安全運転管理者とドライバーが運転行動について客観的な資料をもとに話合いをし、より安全運転へ、そして業務の効率的な遂行へつながるような改善をしていくことが求められます。「そのためのヒントを探す」というような認識で対応したほうが効果が上がりますし、特に安全運転管理者がカウンセリングマインドを持ってドライバーと接することは非常に重要です。指摘された運転行動の修正による交通事故の減少、さらには保険料の減少、そして何よりも運転者の健康維持などに多大なる効果があると期待されます。運転への復帰の可能性、運転への復帰の可能性、運転リハビリテーション運転リハビリテーション6脳卒中であれば発症し治療が行われ、そしてある程度の期間のリハビリテーションを経て、機能回復を示される方もいらっしゃいます。雇用する側にとっては、その方の専門的技能を高く評価し、職務に復帰してほしいと考えるものの、運転可否判断、そして復職の判断が容易ではない場合もあります。脳卒中後遺症のような方々はもう復職できないのか、運転業務に戻ることはできないのか、そのような判断は一義的にできるものではありませんが、脳卒中を発症してもその後、仕事に復帰、特に運転関係の仕事に復帰されたという方もいます。日常生活のなかで「車の運転が必要という理由」が、「収入を得るため」であり、そのため「家族を養うために職場復帰」、そして「その中心的な業務が運転である」という方が運転リハビリテーションを行うことで、復職や運転復帰が可能になったケースでは、当事者本人の希望とともに、家族の理解、そして協力が必要です。また、医療側が「運転可」という判断に至った場合には、さらに運転免許センターなどの公的機関と相談をしながら、運転可否について総合的に判断をしてもらうということも行われています。私たちの研究チームでは、認知機能検査、運転シミュレータ検査、そして実車運転評価を組み合わせながら、医療サイドの意見を総合して診断書や意見書を交付し、運転免許センターなどでの安全運転相談を受けて判断をしてもらうといった取組みも行っています。脳卒中発症によって事故を起こしてしまい、免許証が取り消しになった方が、免許の欠格期間を過ぎてから自動車学校に入り直して免許を取得し、日常生活において車を中心とした移動を行っているというケースもあります。一方、脳出血からの治療、そしてリハビリテーションがかなり進んだ方で、本人が強く希望されて、運動系の機能の低下はほとんど見られなくなったものの、視野障害があり、やむなく運転をともなう仕事への復帰を断念したというケースもあります。まとめまとめ7これまで高齢者の運転と健康の問題、特に高齢あるいは障害のある方の職務への復帰という観点からまとめてきましたが、ケースバイケースの傾向が特に強い分野でもあります。日本老年学会では、高齢者の基準を10年伸ばし、「75歳からを高齢者とすべき」という見解を示しています。高齢者は健康を守りながら再就職して自己実現を図れる、雇用者側は技能も社会的スキルも身につけた高齢者を雇用できるということで、双方にメリットがあります。高齢者雇用の推進においては、高齢者の健康や安全確保の視点から、各専門家や機関との情報交換をおすすめいたします。身体機能身体機能のの変化変化安全・健康対策安全・健康対策とと加齢 による

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