エルダー2025年4月号
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の支給を受けることも予定されている。そして、このような事情は、定年退職後に再雇用される有期契約労働者の賃金体系の在り方を検討するに当たって、その基礎になるものであるということができる」と判断しており、その他の事情として、老齢厚生年金の受給など公的給付も考慮することが想定されています。また、現在差し戻しされており判断が確定した事件ではありませんが、名古屋高裁令和4年3月25日判決(名古屋自動車学校事件控訴審)においては「高年齢雇用継続基本給付金も老齢厚生年金(報酬比例部分)も、高齢者の低減した賃金総額の補填をも目的として給付されるものであると解されるから、一審原告らがこれらを受給したことを、労働契約法20条にいう不合理性の評価を妨げる事実として考慮することはあり得るというべきである」と判断しており、公的給付に関して長澤運輸事件での判断と同様に、老齢厚生年金および高年齢雇用継続給付の受給を④その他の事情の考慮要素としており、考慮要素として加味したこと自体は最高裁の判断においても直接否定されたわけではありません。2高年齢高雇年用齢継雇続用給継付続を給受付給す制る度要件は、①続給付の支給率が変更されることによって、には、同給付を受けることのみをもって、一定程度の補填がなされているとはいえなくなってきます。また、現在、同一労働同一賃金の制度に関する見直しの議論においては、賃金の差異に関する説明に関する見直しなども議論されています。審では、基本給や賞与に代わる一時金の性質や目的に着目した判断がなされていなかったことが高裁への差し戻し理由とされました。の継続雇用においては、同一労働同一賃金における考慮事項である①業務の内容や、②責任の程度、③これらの変更の範囲について、定年前から変更して削減または軽減することや、これらの変更をふまえた給与体系を構築しておくことで、賃金の削減にあたって合理的な説明が可能な根拠を用意しておくことが重要です。することに照らして、64%未満の削減を行うことに対して慎重に判断することが必要になると考えられます。2025年4月1日以降は、高年齢雇用継また、前述の名古屋自動車学校事件の上告これらの状況をふまえると、今後、定年後また、高年齢雇用継続給付の支給額が減少と、②被保険者であった期間が5年以上あることであり、その支給額は、2025(令和7)年3月31日までは、賃金月額が75%を下回る場合において、賃金月額の75%との差異を埋めるような金額を支給されることになり、賃金額が61%を下回らないかぎりは、おおむね賃金月額の75%程度となるように調整されていました。2025年4月1日以降、この支給額が減少する予定です。受給の要件は変わらず、賃金月額が75%を下回る場合において、賃金月額の75%との差異を埋めるような支給額になるという制度の全体像は維持されていますが、支給率の上限が10%となり、賃金額がることはありません。適用対象は、60歳に達した日が2025年4月1日以降であるか否かによって判断されることになります。3前述の今名後古の屋留自意動事車項学校事件の控訴審判決において月額賃金が60%を下回る範囲を違法と判断されていました。判決内で明言されているわけではありませんが、高年齢雇用継続給付を受給しても75%を下回る支給額になることも判断に影響していなかったとは考え難いところです。エルダー知っておきたい労働法A&Q64%未満の額まで月額賃金を減少させる場合64%以下の場合でも、10%を超えて支給され60歳以上65歳未満の一般被保険者であるこ41

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