エルダー2025年4月号
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株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之人事用語辞典■■■■■■■■いまさら聞けない 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。2025.446第56回今回は、グローバル人材について取り上げます。2000年代初期に広まった用語この用語が広まりだしたのは、2000年代初期といわれています。公的な資料で大きく扱われてきたのもこのころです。例えば、2011(平成23)年に設置されたグローバル人材育成推進会議がとりまとめた「グローバル人材育成戦略」(2012年)では、グローバル化について、「情報通信・交通手段等の飛躍的な技術革新を背景として、政治・経済・社会等あらゆる分野で「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」 が国境を越えて高速移動し、金融や物流の市場のみならず人口・環境・エネルギー・公衆衛生等の諸課題への対応に至るまで、全地球的規模で捉えることが不可欠となった時代状況」と定義し、わが国がこのような経済・社会のなかで育成・活用すべき人材をグローバル人材としています。また、一般社団法人日本経済団体連合会(以下、「経団連」)の「グローバル人材の育成に向けた提言」(2011年6月14日)という資料の冒頭に、「急速な少子高齢化の進展とそれに伴う人口の減少により、国内市場が縮小する中、天然資源に乏しいわが国経済が将来にわたって成長を維持するためには、 日本の人材力を一層強化し、イノベーション力や技術力を高めることで、発展するアジア市場や新興国市場の需要を取り込んでいくことが不可欠」とし、グローバル人材の育成に向けた提言をしています。引用部分が少し長くなりましたが、グローバル人材という用語が広まった背景として、1990年代のいわゆるバブル経済の崩壊にはじまる国内景気の長期低迷と国内市場の縮小に対して、企業は収益を高めるために、製品の販売ターゲットを国内から世界に広げ生産コストの低い国へ生産手段を移さざるを得ない、またインターネットに代表される技術革新により、望むと望まざるとにかかわらず国境を越えた競争に巻き込まれてしまうような社会情勢に対応できる人材の育成・活用が急務だったことがよくわかります。グローバル人材に必要な要素グローバル人材は一言で表現すると、「グローバル化を推進するために国境を越えて活躍できる人材」といえますが、より具体的な定義についてみていきましょう。グローバル人材育成推進会議資料では、グ「グローバル人材」※1 三つの要素の説明の次に、「このほか、『グローバル人材』に限らずこれからの社会の中核を支える人材に共通して求められる資質としては、幅広い教養と深い専門性、課題発見・解決能力、チームワークと(異質な者の集団をまとめる)リーダーシップ、公共性・倫理観、メディア・リテラシー等を挙げることができる」との追記がある※2 教育基本法に示された理念の実現と、わが国の教育振興に関する施策の総合的・計画的な推進を図るため政府として策定する計画。直近では、2023年6月16日に第4期が閣議決定

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