■■■■■■■■人事用語辞典いまさら聞けないエルダー47ローバル人材を次の要素※1を有した人材としています。要素Ⅰ:語学力・コミュニケーション能力 要素Ⅱ: 主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感 要素Ⅲ: 異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティーまた、経団連資料では、グローバル人材を「日本企業の事業活動のグローバル化を担い、グローバル・ ビジネスで活躍する(本社の)日本人及び外国人人材」とすると定義しています。ここで特徴的なのは、グローバル人材育成推進会議の方では、日本人人材を対象としたグローバル人材育成をいかに進めるかに比重が置かれているのに対して、経団連の方は外国人人材にもターゲットが広がっている点です。これらの資料が作成されたときは、グローバル人材を輩出するために教育の重要性が強く説かれ、グローバル人材育成推進会議資料では、語学(特に英語)教育の充実化や大学教育システムの改善、海外留学・留学生交流の推進がおもに提言されています。また、経団連資料ではグローバル人材育成に対する大学教育の果たす役割はきわめて大きいとして、産業界の求める人材と大学で育成する人材のマッチングを進めるための産業界と大学の連携強化や、イノベーション創出に向けた理工系教育の強化、グローバル人材育成プログラムの実施などが提言されています。その後、2013年6月に閣議決定された「第2期教育振興基本計画※2」の未来への飛躍を実現する人材の養成としての基本施策16に「外国語教育、双方向の留学生交流・国際交流、大学等の国際化など、グローバル人材育成に向けた取組の強化」が掲げられ推進されることになります。グローバル人材の課題は続いている現在に目を向けてみましょう。グローバル人材という考えや存在は“あたり前”となり、一時に比べて用語としてはみかける機会が減りました※3。ただし、課題は依然として残っています。本稿で取り上げた2000年代初期は海外に出て活躍できる日本人の育成に比重が置かれていましたが、現在は外国人が日本で働くうえでの課題も表出化してきています。日本で働く外国人労働者数は2010年約65万人から2024(令和6)年約230万人と右肩上がりに増えているなか※4、外国企業の日本への進出はそれほど増えていないといわれています。例えば、経済産業省の「第54回外資系企業動向調査(2020年調査)」をみても2015年度から2019年度の日本への新規参入企業は2015年度74社に対して、2018年度45社、2019年度48社という状態です※5。この理由については、「令和4年度我が国のグローバル化促進のための日本企業及び外国企業の実態調査報告書」(2023年2月 経済産業省委託調査)から知ることができます。外国企業からの回答のなかで、「先進国と比較した日本のビジネス環境の『強み』と『弱み』」に対する質問として最も弱みとして回答があったのが「英語での円滑なコミュニケーション」です。このことは「日本に拠点を立地させるうえでの阻害要因」の第二位、「グローバル日本人人材を確保する上での阻害要因」の第一位にもなっています。外国企業の日本への進出をむずかしくしているのは、事業活動コストや市場の大きさなどの面もありながらも、グローバル人材の課題としてかねてからあげられている外国語でのコミュニケーションに起因する要素は非常に大きく、課題としては継続しているといえます。* * *次回は、「産前産後休業・育児休業」について取り上げます。※3 国立国会図書館リサーチで「グローバル人材」をキーワードとして含む資料を検索すると、2010年~2014年は886件、2015年~2019年は788件に対して、2020年~2024年は283件と2020年以降、減少していることからもみてとれる※4 「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ」(厚生労働省、2024年10月末時点)※5 本調査は、2020年調査をもって終了のため、本調査が最新となる
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