エルダー2025年4月号
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2025.452※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します坂さか本もと貴たか志し 著/講談社/1100円酒さか井い邦くに嘉よし 著/朝日新聞出版/990円ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」デジタル脳クライシスAI時代をどう生きるかデジタル機器に頼る場面が増えている。AI(人工知能)の登場により、それは高まるばかりだ。AIは、これまで人が行っていた作業を大幅に効率化したり、新しい価値を生み出したりするが、反面、リスクも潜んでいるとされる。インパクトのある本書のタイトル「デジタル脳クライシス」は、「デジタル機器やデジタル技術の虜になった人の脳が直面する危機や岐路(クライシス)」を意味すると、著者はいう。本書は、言語脳科学者である著者が、言語と脳という視点から、「手書きかキーボード入力か」、「紙かデジタルか」のそれぞれの記憶定着の差異など、さまざまな研究の成果に基づき、デジタル機器への過度な依存は自分の脳が本来持っている力を衰えさせてしまうリスクがあると、警鐘を鳴らす。そして、脳を衰えさせず、よく働く状態を保つための処方箋を示している。適切な思考力が身につけばITにも強くなれるが、「その逆は成り立ちません」と著者は説く。なぜなら、「初めからITやデジタル機器に頼ることで自分の頭を使わなくなるから」だ。車に頼っていると、歩くための筋力が衰えるのと似ているだろうか。便利さを享受するだけでなく、どう使うかを考えるきっかけになる一冊である。日本の人口は、2007(平成19)年の1億2777万人をピークとして減少しはじめた。その変化は緩やかであったが、2024(令和6)年以降は速度を増して減少すると予測されていて、著者は、「私たちは人口減少経済とはどのようなものなのかを身をもって経験することになる」と日本のこれからを表現している。本書は、労働市場の分析を専門とする著者が、労働市場の需給、賃金の動向、人々の働き方などに注目しながら、日本経済の現時点を解説。第1部では、統計データを分析して日本経済に起きている変化を概観。第2部では、少ない人手で効率よく生産するために、建設や運輸、販売、接客・調理、医療、介護の企業の現場でロボットやデジタル技術を活かしている事例を紹介。第3部では、現状分析をもとに人口減少経済の八つの未来予測を考察。一つめの予測は、人手不足はますます深刻化すること。女性の就業率が近年急速に高まっていることをふまえると、期待されるのは高齢者の労働参加であるという。また、賃金水準が上昇し、高齢であっても無理のない働き方でそれなりの労働収入を稼ぐことが可能になるだろうなどと予測もしている。人口減少・人手不足が加速する日本。これからどうなるのか?AI 時代に必要なのは思考力!「創造的な脳」のための処方箋を示す

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